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■2051 / inTopicNo.1)  文族の春、中編
  
□投稿者/ 444@akiharu国 一般人(1回)-(2008/01/31(Thu) 05:29:08)
    2008/01/31(Thu) 19:53:54 編集(投稿者)
    2008/01/31(Thu) 05:29:25 編集(投稿者)

    ○密林大決戦・akiharu国最後の日

    -----

    南国の藩国、akiharu国。
    自然豊かといえば聞こえはいいが、実質未開の藩国において、
    数少ない近代施設である政庁。

    その会議室において、akiharu国の未来を決める会議が行われていた。

    「今日の議題は、次の取得アイドレスをどうするか、だ。
     カマキリにADは使いたいとして……」

    議長を務めるのは、akiharu国藩王、涼原秋春。
    ドラッグで有名な藩王であり、ぼんくらな藩王であることはその発言からもうかがい知れる。

    提示された議題を前に国民たちが「ここはマンタンクだろ」「いや、番長」「鬼畜眼鏡……」などと
    話していると、高らかに手を挙げ、発言許可を求める男がいた。

    「藩王様、提案があります!」
    「どうしたんだい、天狐さん」

    東西天狐。鍛え抜かれた肉体を持ち、
    akiharu国の吏族にして秘宝館の炎熱編集として知られる男である。

    「遊園地を取りましょう!」
    「遊園地? うーん、資金と娯楽が入るか。
     でも資金はうちの国、みんな働き者だからどうにかなるし、
     娯楽は南国人だから欲しいけど、収入少なめだしなあ……」

    「火焔と遊園地で遊びたいから、遊園地を取りましょう!」
    「おい」

    東西天狐、彼はGPO緑の結城火焔と小笠原で(略)

    「取りましょう!」

    後になって、藩王は語っている。
    あのとき天狐さんに逆らったら殺されると思った。
    今思い出しても震えが来る、ドラッグでも忘れられない。
    ほら、今でも震えてるだろ?

    それはドラッグの使いすぎだよ。そんな未来を予知夢した後、
    藩王は窓の外の密林に眼をやり、言った。

    「わかった。……一仕事になるな」


    /*/


    南国であるakiharu国は、それはもう木々に囲まれた国である。
    密林である、ジャングルである。
    国民たった2人で立国した藩王が力尽きて、もう開発はこんなもんでいいや、と妥協したともいう。
    そのため、ターン1の冒険イベントで舞台に森が出てこないで泣いたともいう。

    ターン1の食糧生産地開発イベントでも、国力が足らずに開発できずにいたため、
    密林はほぼ手付かずのまま残っていた。

    ギャアギャアとやかましい怪鳥の鳴き声を、
    ホバーの風が噴き出す音と、エンジンの駆動音が上書きする。

    akiharu国産共通I=Dターキッシュバン。
    その機体には土木作業用に、チェーンソーが近接装備として採用されている。

    「遊園地造ろうにも平地がないからね。
     いい機会だ。森を伐採しちゃって」

    「任せてください」

    多くのI=Dと同じようにターキッシュバンは一人では動かせない。
    パイロットは、熱い魂を持つ男、和志
    コパイロットとしては提案者の天狐、万能執事を志す鴨瀬高次が搭乗していた。

    「それじゃあ天狐さん、鴨瀬さん、いくっスよ!」
    「OK!」
    「まかせてください」

    うなりを上げてチェーンソーが振るわれる。
    根源種族との戦いを想定して設計された武装の前に、木々が面白いように切断されていく。

    「こんなに切っちゃっていいんですか?」
    「まあ、木材として国外に輸出して、にゃんにゃんに変えるよ。
     資源としても使えるしね」

    外野で見守る藩王と国民たちをよそに、ターキッシュバン組の工事は順調に進んでいた。

    「よし、いい感じに斬れてる」
    「この調子っスね!」
    「……待ってください、これは!」

    これまでチェーンソーの前に切断されるだけであった木の手ごたえが、急に変わった。
    チェーンソーの刃が弾かれ、機体のバランスが崩れそうになるのを
    和志はどうにか立て直した。

    「刃が通らない!? 硬くなったというより、受け流されたような……」
    「そんな、ただの木ですよ? ありえない」
    「いや、待ってください。これは……学生の学習行為!?」

    三人の叫びをよそに、木々はざわざわと枝葉を揺らした。
    風一つないというのに、まるで意志あるかのように。

    「藩王様、これは!?」
    「……人ですらない木々といえ、akiharu国産。
     僕たちのイグドラシルの影響を受けているということか……」
    「そんなてきとーな!」
    「……この間、うっかり森でドラッグこぼしたのがまずかったかな?」
    「それだーーーーッ」
    「超薬戦獣ならぬ、超薬戦樹といったところか……」
    「いや、ネーミングはいいから」

    藩王たちの漫才を聞きながら、天狐の心は静かだった。
    そう、静かに燃え盛っていた。
    学習行為、超薬戦樹、それがなんだというのだ。
    全ては火焔のために、僕は遊園地を造るのだ。
    そして、そのためにはこいつらは邪魔だ。
    木材の分際で生意気な、セルロースまで分解されて紙の資源になってしまえばいい。


    「ふふふ……面白くなってきた。
     和志さん、鴨瀬さん、いきますよ!」
    「わかったっス! 燃えるっスね、出力全開!」
    「藩王様の不始末は私たちが拭いましょう」

    akiharu国のコパイは鞭の達人にして白兵重視、
    決して白兵向きではないターキッシュバンといえど、この乗り手たちが使えば、一騎当千の力を発揮するのだ。
    リアルデータにして58倍に達する一撃に、ただの木ごときに抵抗する術など存在しない。

    「あ、木が鞭の達人ラーニングした」
    「ターキッシュバン、枝でぐるぐるまきですねえ」
    「あ、ほうりなげられた。よく飛んだなあ」
    「藩王様、4さん。解説してないで」

    あいにくと、超薬戦樹はただの木ではなかった。
    くるくると吹っ飛ばされたターキッシュバン。
    泥沼に叩きつけられた後、ずるずると滑ってようやく動きを止めた。

    コクピットから這い出してくるパイロットたち。
    そんな彼らを心配してか、駆け寄る人影があった。

    「三人とも、大丈夫? いまの吹っ飛ぶ姿、すごくいい絵が描けたよ。
     いやあ、創作意欲が刺激されるなあ!」
    「心配したんじゃないんですか!」

    技族の橘が、すごくいい顔で眼鏡を光らせ、スケッチブックを広げて見せた。

    「心配はしてるさ。創作意欲はそれとは別ってだけで!」
    「もういいっスよ! ……どうしたもんですかね」
    「見苦しい姿をお見せしました。……天狐さん?」
    「…………」

    天狐は、何も言わず、うつむいていた。その表情は見えない。
    いや、ぶつぶつと、注意しなければ聞こえないような声で、
    何かをつぶやいていた。

    「足りない……こんなことじゃあ足りない!
     僕はあの子に、届かない!」

    叫ぶ天狐。悲痛な叫びに誰も声をかけられない中、
    ただ一人、手を差し出すものがいた。

    「大丈夫っスよ」
    「……和志さん?」
    「ここは俺に任せるっスよ。……ヒーローっていうのは、こういうときどうにかするものさ」

    和志が全身に力を込める。
    体を包むパイロットスーツが音を立てて破け、
    その下から素肌が、いや、緑色のもっと硬質なもの、
    そう、外骨格があらわになった。

    「和志君、何を!?」
    「藩王様、忘れたんですか……俺が、カマキリの、最初の被験体だったってことを!」

    カマキリ。それは竪穴に封じられしakiharu国の最終兵器。
    戦い以外を知らず、敵がいなければ味方にすら襲いかかる狂気の戦闘獣。
    改造手術を受け、その姿を変えれば元には戻れぬ忌まわしき呪い。
    自らも狂獣と化して果てた、セプテントリオンのイヤーワーカー、オーケの遺産。
    そんな化け物に、和志はなろうというのか。

    「いけない! 君が戻ってこれたのは、まだカマキリが試験段階だったからだ。
     もう一回変身すれば、もう、二度とは……!」
    「いいんですよ、藩王様。……ここが俺の力の使いどころです。
     それに、一回実戦でカマキリ使ってみたかったし!」
    「あ、本音だ」
    「ハァァァァァァァァッ!」

    叫びとともに、変身が完了する。
    緑色の外骨格、真っ赤な外骨格、ひるがえったマント、
    唯一人間だったころのなごりを残す、赤いマフラー。
    和志は、変身した。二度とは戻れぬ、変身を。

    「ヴォオオオオオオオ!」

    もはや人のものではない叫びを上げ、和志は、いや、カマキリは、
    その刃、高速振動ブレードをかかげ、超薬戦樹に向かって突撃した。

    「あ、木がカマキリをラーニングした」

    (中略)

    「akiharu国に栄光あれーーーーーッ」

    カマキリは爆発した。

    「和志さーーーーんッ」
    「倒されて爆発するのは、ヒーローじゃなくて怪人ですよーーーーッ」
    「こっ、この木、あるいみエースキラーよりたちが悪いような……!」

    和志を倒した超薬戦樹は、カマキリの力すら取り込み、
    枝をふるわせながら急速に膨れ上がりつつあった。


    「みんな、落ち着くんだ」
    「藩王様……!」

    うろたえる国民たちを、藩王の声が正気に立ち戻らせた。
    そして藩王涼原秋春は、もう一度繰り返した。

    「落ち着くんだ
     ……とりあえず、ドラッグを決めたら万事うまくいった気分になれるよ!」
    「藩王様は黙っててください!」

    涼原秋春は肩をすくめると、口もとをつりあがらせて言った。

    「僕にいい考えがある」

    /*/

    「森が、燃えていく……」

    密林は、炎によって赤く染め上げられていた。
    あれから涼原秋春は、藩国に存在するありったけの燃料と弾薬を集め、
    徹底的に森の焼却を図ったのだ。
    超薬戦樹たちがうなりを上げて燃え尽きていく。

    「本当に、よかったんでしょうか……
     大自然をこんなに破壊して……」
    「……たとえどんな結果であれ、僕たちは前に進んでいかなければいけないんだ。
     たとえ間違っていたって、明日を生きることが、和志さんへの弔いにもなる」

    悪いのはみんなお前だろうが、という国民の視線を受け流しながら、
    涼原秋春は、天狐さんには悪いけど、焼畑農業として食糧生産もいいよなー、と思っていた。

    /*/

    全てが焼き払われた後、かつて密林があった大地は、灰におおわれた。
    その灰の中から、緑の芽が一つ顔を出していた。

    /*/

    密林は3日で蘇り、超薬戦樹によって、akiharu国は滅んだ。

    /*/
























    そしてさらに3日でakiharu国は復興した。
    まあ、なんというか、この国民にして、この国があるのだ。




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