| 通常、西国人は科学技術の国であり、燃料生産には高度な科学技術をもってあたる。 宰相府も西国人の例に漏れず、いや、通常の西国人国家を凌駕する科学技術があったが、 加えてもう一つ、他の西国人にはない利点があった。
魔術である。 宰相府には、魔術師である宰相と、その娘である魔術的舞踏子たちがいた。 高い科学技術と魔術の融合が宰相府の力の源の一つであり、 その力は燃料生産においても発揮されていた。
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見渡す限り砂以外のものがない砂漠の真ん中に、 とんがった帽子を被り、宰相府を表す白の衣装を身につけ、箒にまたがった少女がいた。 宰相府の魔法少女である。
本来なら過酷な砂漠の環境の前に、すぐに倒れてしまいそうな華奢な体をしていたが、 よく見ると、その姿がぼやけている。 魔術で風を身にまとうことで、強烈な日光をねじまげ、灼熱の外気を遮断し、身を守っているのだ。
魔法少女は、宰相府の事業として燃料の埋蔵されている場所を探しに来ていた。 その手に持った針金に眼をやると、特に手を動かしたようにも見えないのにぴくぴくと動き、 左右に開いた。
「ダウジングの反応が……油田はこの下ね。探査機による事前調査とも一致してるわ」
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宰相府の燃料埋蔵地の発見技術、 それは、科学と魔術による二つの探査技術で油田の場所を絞り込むという、 他の西国人国家では類を見ないものであった。
この場合は、科学技術で燃料のあるおおまかな地域を絞り込み、 魔術で絞り込みを行う方式を取っている。
もちろん、地底深くからの燃料の採掘など、魔術では困難な作業もあったが、 魔術と科学を合わせることで、どちらか単独の技術より、はるかに効率的に作業を進めることができた。
また、魔術は燃料の精製においても極めて活躍していた。 理の力、理力。理力を用いて、原油から燃料成分と不純物を極めて効率的に分離することに成功したのである。
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