#正しい人とは #1.法を守る人(合法的なことをする人) #2.公正な人 #不正な人とは #1.法を破る人(違法なことをする人) #2.不公正な人 #にそれぞれ分けられる。 #不公正な人とは #1.名誉や財貨、安全などをより多くを選び取り #2.不名誉や損失、危険などをより少なくを選び取る #人である。 #法律とは #1.徳のある行為を命令し #2.悪徳のある行為を禁止する #ものである。 #誤りなく定められた法律:上記のことを誤りなく行う。 #いい加減に定められた法律:上記のことをへたに行う。 #正義とは他者との関係における完全な徳である。 #また、正義とは徳の所有ではなく、使用である。 #公正なことは #1.名誉や財貨などの配分 #2.さまざまな取り引きの是正 #に分けられる。 #取り引きの是正は #1.自発的なもの(被害者が自分からやること)の是正 #2.非自発的なもの(被害者が自分からやらないこと)の是正 #に分けられる。 #自発的なものは販売、購入、貸与、担保入れ、融資、委託、賃貸などがある。 #非自発的なものは #1.密かに行われるもの(窃盗、姦通、毒物使用、売春斡旋、奴隷誘拐、暗殺、偽証など) #2.暴力的なもの(暴行、監禁、殺害、強盗、傷害、中傷、虐待など) #に分けられる。 #取り引きの是正における不正なこととは、等しさを欠いた事態である。 #裁判官は加害者から利得を奪い(たとえば殺人犯を死刑にする)、これを公平にするよう努める。 #是正の正しさとは「加害者の利得」と「被害者の損失」の中間(等しいもの)である。 #応報は必ずしも正しくはない。 #たとえば、警官が市民を殴ったからといって、殴り返されることはない。 #逆に市民が警官を殴ったら、殴り返されるだけでなく、懲罰も受ける。 #しかし、人は悪に対してはふさわしい罰を返すことを求める。 #また、親切を示してくれた人にはお返しに奉仕しなければならない。 #取り引きにおける正しさを達成するためには受け取るものと返し与えるものが等価でなけらばならない。 #たとえば、家職人の作った家1軒と靴職人の作った靴1足では価値が違う。 #また、交換の対象になるもの(医療サービスなどを含む)はすべて比較できないといけない。 #貨幣は交換対象を比較するため、必要なものの代替物として作られた。 #貨幣は自然に存在するのではなく、法によるもののため、その価値を変えるのも使えなくすることもできる。 #貨幣の価値はいつも等しくはないが、他のものより安定する傾向にある。 #法的正義とは「正しいこと」と「不正なこと」の判定である。 #人間に支配させると自分の利益を考えて独裁者になるため、道理に支配させたほうがよい。 #支配者が正しい人なら、より多く取ろうとしないため、他人のために働く。 #そのような人には名誉と褒賞(ほめられること)が与えられる。 #それに満足しない人が独裁者になる。 #「不正なこと」と「不正行為」は異なる。 #「不正なこと」を自分で選んで行う場合、「不正行為」であり、非難される。 #「不正なこと」を強制されたり、たまたま知らずに行ったり、酒に酔って行った場合は「不正行為」ではないと考えられる。 #加害は #1.過失(無知により、思っていた相手に、思っていたことを、思っていた方法で、思っていた結果に行えなかったこと) #2.不運(天災など) #3.不正行為(悪いことと知っていながら行うこと) #に分類される。 #「不正行為」を行う人が「不正な人」とは限らない。 #たとえば、人を殴ることを悪いことと知っていても、怒りで人を殴った場合、問題は怒らせた人の方にあると考えられる。 #なぜなら、怒りは不正に見えるものに対して感じるからである。 #だから、裁判では殴ったか、殴らなかったかを争わず、殴ることが正しかったか、どうかが争われる。 #非自発的に被害を与える場合、あるものはゆるされ、あるものは責められる傾向にある。 #知らずに行ったり、酒に酔って行った場合はゆるされる。 #情念(理性では抑えられない強い感情)、特に不自然で人間的ではない情念で誤った場合、たとえ酒に酔っていたとしてもゆるされない。 #相手の価値に反してより多くののものを相手に割り当てることも不正行為である。 #この場合、より多く手に入れた人は必ずしも不正行為をしていることにはならない。 #配分する人が知らずに割り当てた場合、法的には不正行為ではなく、その配分の判定も不正ではないと考えられる。 #しかし、ある意味ではその判定は不正である。 #なぜなら、「合法的な正しさ」と「本質的な正しさ」とは異なるからである。 #配分する人が配分すべき量を知っていて不正に配分した場合は、相手からの感謝をより多くとろうとしたり、相手に懲罰をいっそう加えようとしている。 #そのような動機で配分する人は、結局、より多くのものを得ている。 #人は不正な行為をすることは簡単だから、正しい人になることも簡単だと考えている。 #しかし、これは正しくない。 #不正なことを行うのは簡単であるが、悪い人になってそうしたことを行うのは簡単ではない。 #だから、正しい人になることも簡単ではない。 #また、人は正しいことと不正なことを見分けることのに知恵はいらないと考えている。 #しかし、どのような仕方が正しいか、どのように割り当てれば正しいかを知ることは労力がいる。 #たとえば、投薬したり、メスで切ったりする場合、どんな人にどのような方法ですれば健康に役立つかは、医者になるくらい詳しくないといけない。 #品位は正義とよく似ている。 #「適正なこと(品位あること)」は「合法的な正しさ」よりもよいものである。 #法は多くのものごとにあてはまる正しさであって、あるものごとに関してはあてはまらないことがある。 #そのような場合、法はそういう場面ではあてはまらないことを知りつつ、法にあてはめる。 #そうした誤りがある場合でも法は正しい。 #しかし、法で想定していない場面を補い、是正するなら、その是正の仕方は正しいと考えられる。 #そのため、「適正なこと」は法律の一般性に起因する誤りよりもよいため、「合法的な正しさ」よりもよいものであるが、「本質的な正しさ」よりよいものではない。 #「適正なこと」は法では不十分な場面で、法を是正するものである。 #「品位ある人」とは、さまざまな状況で「適正なこと」を選び、行う人である。 #悪い意味で正しさに固執する人ではなく、たとえ法で自分が有利になる場合でも、自分のものをより少なくとる「控えめな人」である。