僕は人に恥じるような生き方はしていない。  超能力者として、ヒーローとして、みんなのためにがんばっている。  しかし、そんな僕でも、わけもなく不安になることはある。  そんなとき、僕はクーリンガンさんに逢いに行くことにしている。  僕自身、彼と直接、面識があるわけではない。  しかし、クーリンガンさんがすごい人であったことは知っている。  お医者さんとして、みんなを助けたえらい人だ。  彼がいなければ、あのレディさんも生まれてこなかったかもしれない。  だから、僕は彼のお墓に足を運ぶ。  電車に乗る前に、僕は花屋に立ち寄った。  極彩色の植物が、ところせましと並んでいる。  僕は、クーリンガンさんの好きそうな花を自分なりに考えて、季節ものの一番地味そうな花を選んだ。  駅の待合室で電車を待っていると、何人かの集団が入ってきた。  手首に数珠をつけたヒトに、ヒシャクとバケツを持ったカマキリ、首に十字架を下げた猫士。  おそらく彼らもクーリンガンさんに逢いに行くのだろう。  お墓に着くと先客がいた。  学生さんたちが掃苔していたのだ。  「よかったらどうぞ」  そう言って、カマキリの番長が缶コーヒーをくれた。  さっきまでお供えしていたものだ。  器用にもカマでプルタブを開けている。  まだコーヒーはあたたかく、クーリンガンさんのやさしさの味がした。  彼は死んでしまったのかもしれないが、彼のやさしさはこうして人々の中に生きている。  そう実感させられた。  僕はクーリンガンさんを敬愛し、生きてきた。  でも、彼のお墓、立派な楡の木を見ると、未熟だと痛感させられる。  僕の人生はまだ長く、未完成だ。  おじいさんになって死ぬまで、一生努力し続けよう。  僕はそう心に誓った。