I=Dの推進器分類

シーキャットの推進器は、既存機のロケットを流用した構造となっている。
ロケットとは、作用反作用の原理を用いて、推力を得る装置である。
よって、ロケットは、噴射する物質の質量が大きければ大きいほど、推力も大きくなる。
また、質量が同じでも、噴射物質の速度が大きくなれば、推力を大きくできる。

ニューワールドでI=Dや宇宙戦闘機の推進器として一般的なのは液体燃料ロケットである。

液体ロケットは、液体推進剤を加圧ガス、もしくはポンプによって燃焼室に送り、推力を得るものである。
液体ロケット方式は、燃焼の中断、最着火が可能で、推力の大きさや方向を制御しやすいという長所があるが、構造が複雑で高価になる欠点があった。
一方、より安価である固体ロケットには、一度点火すれば燃料を止めることが難しい欠点があり、戦闘機動には不向きであった。
この性質差から、主推進器には主に液体燃料ロケット、使い捨てのブースターには固体ロケットが選択される事が多い。

もう一つの主流は、反物質と推進剤の水を反応させることで
大電力と推進力を同時に得ることが出来る対消滅反応ロケットエンジンである。
共和国でこれを採用しているのは無名騎士藩国のヘリオドール、そしてアビシニアンと、宇宙での活躍実績のある機体である。
しかしこのタイプのエンジンは9m級機体に積むとすると、高性能の反面短期決戦機になってしまう。
ヘリオドールも、各種RBも、AR10でしか動けなかったのである。
そして、共和国に今求められていたのは低AR機ではない。
そのような判断から、シーキャットに採用されたのは液体燃料ロケットであった。

また、液体燃料ロケットを採用することにより、他機種と共通規格を使用できるようになったのは言うまでもない。
全国のI=Dの規格を揃えることにより整備性を向上させるMANTIS規格であるが、
当のカマキリたちが独自路線だと笑えないよねー、とは開発現場で漏れたジョークであった。


シーキャットにおける推進器配置

さて、主推進器であるが、シーキャットの場合は両脚に搭載されている。
ターキッシュバン2からシーキャットへの改修を行うに従い、
ホバー歩行が必要なくなった膝から下は再設計が行われている。
しかし、燃料や電力の供給ライン配置や、搭載スペースを考えると
やはり従来のシリーズと同じくエンジンは脚部に搭載するのが最適である、と結論付けられ、
内部構造に大きな変更は加えられていない。
もちろん、ターキッシュバンシリーズの脚は元々ホバー機であるが故に大きい。
つまり、本来の機体サイズよりも1ランク上のサイズのエンジンを搭載できるのである。
それに加え、両脚に搭載するわけであるから当然ながら双発である。
結果として、シーキャットの機動性はかなりのじゃじゃ馬になることはこの時点で運命付けられたのである。

肩アーマー
シーキャットの推進器はメインエンジンだけではない。
全身に装備されたベクタード・スラスターもさることながら、サブエンジンそのものを動かす機構を搭載している。
目立つところでは、両肩にアーマーと共に増設されたスラスターユニットがある。
この両肩ユニットは腕の動きと独立して可動させることができ、それにより噴射方向を変えることが出来るのだ。


更に、背面にはその愛称の由来となった一対のウィングスラスターユニットが備えられている。
下図は腕部及び両肩ユニットを外した状態である。
見てわかるように、翼のように延びたユニット先端にはスラスターが配置されており、また基部にも左右方向への推進器が配置されている。

腕部排除時


士季号のテールスタビライザーユニットから発想を得たとも言われるこのユニットはフレキシブルに可動し、
柔軟な機動性を機体に与えるのだ。
このように、シーキャットは「宇宙戦用人型機」であるが故に推進器そのものを可動させる構造を取ることが出来る。
これが宇宙におけるI=Dの強みなのだ。


シーキャットの姿勢制御

姿勢制御のもうひとつの方法は、推力に寄与しないアクチュエータを用いるものである。
シーキャットでは、フライホイールと複数のバーニヤ・スラスタを、アクチュエータとして装備している。
フライホイールは、質量の大きい円盤を回転させるものである。
用途からリアクション・ホイール、モーメンタム・ホイールに分けられる。
バーニヤ・スラスタは、姿勢制御用の補助エンジンのことである。

軌道や姿勢の制御は非常に複雑である。
名パイロットでも、それらを考慮して操縦することは難しい。
未熟な操縦者には、なおさらだ。
そのため、シーキャットには処理能力の優れた電子部品と宇宙に最適化されたソフトウェアを搭載している。

さて、姿勢を制御する場合、自分がどこを向いているのかという基準が必要である。
そこで、シーキャットには、恒星センサが装備されている。
恒星センサとは、基準となる星を含む星空を撮影し、その星座パターンを照合することで、位置と姿勢を知るものである。
基準になる星は、シリウスやポラリスなどの明るい星である。
しかし、恒星センサはスラスタの噴射炎によって、観測が阻害されることがある。
そのため、シーキャットには、光ファイバ・ジャイロも装備している。
光ファイバ・ジャイロとは、その名のとおり、光ファイバを用いたジャイロ・スコープである。
機械的な可動部がないため、寿命が長く、信頼性が高いという特徴がある。
さらに、消費電力も小さく、製造コストも安い。
これらの装備によって、シーキャットの姿勢は制御されているのだ。