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akiharu国猫士観察日記

akiharu国猫士観察日記

作:東西 天狐

 春休みの宿題の自由研究で、僕の国にいるたくさんの猫さんの観察をしました。
 僕の国にはたくさん猫さんがいます。
 でもちょっと変わった猫さんが多い気がします。
 
 ―1日目―
 
 猫さんを観察しようとすると逃げられてしまいます。
 猫さんはけーかいしんがとっても強いからです。
 困って歩いているとI=Dのかくのーこの近くの空き地で変わった猫さん達を見付けました。
 
 この空き地にはこの間のせいびの失敗でたくさんのガラクタが置かれています。
 それを聞いたら眼鏡を掛けた大人のひとが泣きながら笑って教えてくれました。
 大人は大変です。 
 
 話がずれました。
 猫さんです。
 
 
 ガラクタの隅で何かが動いた。
 解るものが見ればそれは巧妙にカムフラージュされた偽装用ネットであったと知れよう。
 そしてそれをかぶっているのは1匹の猫であった。
 息を殺し、そのかなりやさぐれた目でペリスコープ越に周囲を窺う。
 気配が――無い。
 物音1つしない。
 相手は彼が今までに戦ってきた中でも滅多に無いクラスの実力者だ。
 この偽装も既に見破られていると考えていいかもしれない。
 
 「ちっ・・・厄介な」
 
 生き残るスキルにかけてはかなりの自信を持っているがそれはいけない。
 過ぎる自信は過信となりやがて増長を招く。
 戦場で生き残るには臆病すぎるくらいが丁度いいのだ。
 実際に彼はそうやって数々の地獄の戦場を潜り抜けてきた。 
 
 だが・・・この相手はどうか。
 おそらく互角・・・否、姿を見せてしまえばおそらく一瞬でカタをつけられてしまうだろう。
 深呼吸。
 まずは深呼吸だ。
 彼は考える。
 ここから生きて帰る方法を。
 
 その瓦礫の山の反対側で低く身を伏せている猫がいる。
 風も無いのに赤いマフラーを颯爽とたなびかせ、その眼は凪のように穏やかなれど静かな光をともなっていた。
 
 「この気配・・・只者ではない。いったい何者?」
 
 油断無くぐるんぐるんと尻尾が回転して気配を探る。
 逃げる内に迷い込んだところでこんな障害が待っていようとは。
 歴戦の兵士特有の勘。
 息を潜めてこちらの様子を窺う相手の正体は分からないが既に何度も振り切られていることから並みの使い手では無かろう。
 膠着状態の鉄則は相手を焦らしミスを誘うこと。
 相手もそれは良く分かっているようだが並々ならぬ精神力だ。
 仕掛けるか待つか。
 彼は考える。
 この場を切り抜ける方策を。
 
 
 しかし緊張はあっさりと破られた。 
 
 「見つけたー!!塗らせろぉぉぉ!!!」
 
 脇の茂みからゴーグルをかけた小さい男が赤いスプレーを吹きながら走りこぱらたたたたたたたたたどぐしゃぐわっしゃぁぁぁ
 
 きっちり3秒間のタイプライターをたたくような音の後に、まるでトラックでもぶつかったかのような衝撃音。
 ちーん。
 二人とも咄嗟に反応してしまった為に手加減が効かなかったらしい。
 ・・・やばそ、動かねぇし。
 
 「「・・・・・・」」
 
 視線を交わす二匹の猫。
 頷き合うと肩を並べて一目散にその場を離脱した。
 
 
 ―二日目―
 
 今日は猫さんには会えなかったけど市場できれいなお姉ちゃんにあいました。
 二人でお料理をする為にお買い物をしていました。
 
 ういんくをしているお姉ちゃんの服はきものっていいます。
 きれいでした。
 ちょっとはしゃいでるお姉ちゃんはお兄ちゃんだと思ったらお姉ちゃんでした。
 きれいですって言ったらお顔を真っ赤にしました。
 
 明日は猫さんにも会いたいです。
 
 
 休日ともあって賑わう中央市場の通りをぴょこぴょこと歩く二人。
 お目当ては周辺国でも評判のakiharu国名産物の数々だ。
 後ろについている方が大事そうに抱いているバッグには朝鮮人参、ケシ、山葵といった 漢方系統の食材が満載である。
 前を行くほうの手提げにはきのこやら蔦やらその他「これってたべていいの?」という 品々が満載である。
 はい皆さん、たちばなさんに向かって合掌。
 
 「あの・・・ホントにこんなに買っちゃって大丈夫なの?」
 「大丈夫、二人から(無断で)借りてる」
 「そ、それならいいんだけど」
 
 そこはかとない不安を拭いきれない。
 
 (時々真顔ですごいことするし・・・)
 
 そうこうしているうちに最後の品、バナナワニの肉を求めて精肉屋にたどりついた。
 
 が。
 
 「うわぁ・・・」
 「この愚民共が」
 「そ、そういうことは思っても言っちゃ駄目!」
 「思ったの?」
 「・・・ちょっと」
 
 通常ではツアーに参加しないと手に入らないにも関わらず、消費期限の関係でかなりお買い得なお値段のために客が殺到しているのだ。
 状況は二人の台詞から想像してください。
 あえて言うなら阿鼻叫喚。
 
 「あぅぅ、これじゃとても買えないね。別のお店探す?」
 「問題ない。予定通り」
 「えぇ?」
 
 見る。
 どう見ても入れるような隙間は無い。
 ましてや自分たちの体格では下手をすると踏み潰されかねない。
 
 「でも、とても入れそうに無いよ?」
 「問題、ない」
 「え?」
 
 ズパッと怪しげな注射器を取り出す。
 クスクスと怪しげな笑み。
 
 「えっと・・・もしかして」
 「クス、クスクスクスクスクスクスクスクスクス」
 「ひ、ひ〜ん;」
 
 バナナワニのお肉は無事に買えたそうな。 
 
 
 ―三日目―
 
 今日は学校の裏山でおっきな猫さんを見ました。
 でもとっても大きかったのでちょっと怖かったです。
 近くに小さいけど元気な猫さんもいました。
 お友達だと思います。 
 
 二匹で狩をしていました。
 
 一見虎かと思うほどの巨大な三毛猫がいる。
 虎のように見えるがかろうじて猫である。
 そう言えば虎と猫の明確な違いってどこなんだろ?
 蝶を追っかけて跳ね回る猫がいる。
 さっきから一生懸命ジャンプしているが残念なことに全く届いていない。
 見てる側としては非常になごむ。 
 
 「うー、ねぇちーさんちようちょ捕まらないよー」
 「ああそうかい・・・」
 
 むくれた様子のちっさい猫が喚いてもお昼寝中のおっきい猫は欠伸を返すだけ。
 本人は軽い欠伸のつもりだが実際は大気を震わすほどの吼え声である。
 
 「あ、あー・・・行っちゃった・・・でもいいなぁ、僕もちーさんみたいにでっかくなりたいな」
 
 驚いて、と言うよりは空気の振動に吹っ飛ばされるようにして蝶は飛び去っていた。
 恨めしげで羨ましげな視線を受けてぽりぽりと耳の後ろを掻く。
 別に彼とて好きでこんなにでかくなった訳ではない。
 世の中には空を飛んだり火を吐かなければいけない人間や、羆に勝てないからと羆(ヒグマ)になってしまった人間がいるらしいが、少なくとも彼は望んだことは無いはず。
 気付いたらこうなっていたのだ。
 
 と、がさがさと茂みを分ける音。
 現れたのは何かやる気の無さそうな男だ。
 何かホストとかジゴロって言葉がエラク似合う感じ。
 
 「やぁ、おちびさん元気かい」
 
 手にはビニール袋を提げている。
 手を突っ込んでがさがさとやると、一本の魚肉ソーセージを取り出した。 
 
 「ほら食べるといいよ・・・そっちの大きなお友達の分は流石に足りないけどね」
 
 機敏に跳躍すると前足を伸ばしてネコパンチ。
 
 「おっとっと、ははは、懐いてくれるのは嬉しいんだけどもう少し落ち着きなよ」
 
 さらに相手の水月(鳩尾)に後足でキックキック。
 
 「うーん、しょうがないなぁ。じゃあもう一本あげるよ。さて、そろそろ戻らないとな。じゃあね、おちびさんと友達君」
 
 意気揚々と戦果を咥えて戻ってくるちっさいのを見ておっきいのは羨ましそうにため息をついた。
 
 「はい、これちーさんの・・・どしたの?」
 「いや、身体が小さいのが羨ましいんだよ。ああやって人に飛びついても良いんだからね」
 「ちーさんもしたらいいじゃない」
 「身体が大きいから出来ないこともあるんだよ。君ももし大きくなったら分かるよ」
 
 不思議そうに首をかしげるちっさいのにそれ以上何も言わず、おっきいのはソーセージを一飲みで食べてしまった。
 
 おいしかった。
 
 
 ―4日目―
 
 
 今日はお父さんについてじゃんそうに行きました。
 タバコのけむりで目がいたかったです。
 
 ちがうたくで猫さんが勝負してました。
 猫さんもまーじゃんがすきみたいです。
 
 ぴしぃ。
 ぴしぃ。
 薄暗い部屋の中、卓上を舞うのは136の牌と人(猫)の欲望。
 今日もまた、冥府魔道を悪鬼たちが歩いていく・・・。
 
 「それ、ロンだよ。トイトイ、赤々、ドラが3つ。ああ、親は私だったな」
 「・・・く!読みきられてた・・・てのか」
 「はは、流石は胡蝶蘭・・・名は伊達じゃないみたいね。あたしも本気で行かないと、だね。」
 「次だ、さっさと行くぞ」
 
 「ヌルいよ・・・マンズの二五八が笑ってるね」
 「ぼ。坊主、てめぇ牌が透けて見えやがるのか?!」
 「・・・徹ちゃん差し込んで。まずはこいつの親を降ろす!」
 「ちぃっしゃあねえ、その方が賢い・・・か。」
 「貰ったわよ胡蝶蘭、ロン!緑一色!ドラが」
 「頭ッパネだ。ロン、ピンフのみ」
 「ってめぇ!狙ってやがったな?!小僧の分際で!!」
 「ふ・・・ならその小僧に手玉に取られてるあんたらは小僧以下って訳か・・・クククっ笑えてくるね」
 「えぇと・・・あんたホントにあの蘭?雰囲気が・・・?」
 
 「それだ。ロン。タンピン三色赤1ドラ2」
 「なっ・・・張ってやがったのかぁああ!!」
 「ヌル過ぎるな・・・ダマだからってこんなヌルい三面も読めないのかい?」
 
 「おいハッちゃん・・・話が違うぞ!どこがぼけ−っとしてるカモネギだよ!バカみてーに強いじゃねぇか!!」
 「あっはっは・・・いやぁ参ったねぇ」
 「マジな話このままだと負けるぞ。どうすんだ?!」
 「しゃあないね・・・ばっちゃに頼もうか」
 「ばっちゃ・・・?てまさか!!」
 「鬼には鬼、だよ。何とか持たそう。半荘残せば勝機はある!!」
 
 「はいはい・・・まったく、こんなところにお年寄りを呼ばないでよはっちゃん」
 「ばっちゃ!良かった間に合った!!」
 「・・・そのばーさんが入るのか?」
 「あぁ、あたしの代打ちだよ。その代わりさっきあんたが言ったとおりこっからはレート倍プッシュ・・・異存ないね?」
 「もうはっちゃんたら・・・またそんな無茶な事を」
 「ごめんばっちゃ!このままだとあたしたちお尻の毛どころか耳の毛もむしられちゃうんだよぉ・・・」
 「何でもいい・・・さっさと始めるぞ」
 「あらあら、元気がいいのねぇvおばぁちゃん元気な子は好きよ」
 「親番はあんただ。さっさとしな」
 「はぁい・・・あらあらツイてるわぁ。はい、天和」
 「!!ばーさん、やりやがったな」
 「あらあら、なんのことかしらぁ?」
 (さすがばっちゃ・・・のっけからいきなり積み込んだ。しかも誰もまったく気付けなかった!!イケル!!!)
 「うふふ・・・今のは一回だけ・・・おばあちゃんも疲れちゃうから」
 「上等・・・あんたの背中、煤けさせてやる」
 
 
 今日もまた、冥府魔道を悪鬼たちが歩いていく。
 高級ツナ缶を背負って・・・。
 
 
 ―五日目―
 
 今日は屋根の上にいる猫さんを見ました。
 猫さんはちょっと太っちょでやわらかかったです。
 猫さんは朝日に向かってにゃあにゃあと鳴いていました。
 きっと猫さんはお祈りをしていたんです。
 大丈夫だ、私たちは大丈夫だ。
 
 猫さんはにゃあと鳴いていました。