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スイカゲットだぜ!

スイカゲットだぜ!

作:鴨瀬高次

 王の間
 一人、王の間で秋春藩王は考えた。
 ピラニアを得、吏族が鳥を狩る事でひとまず、食料は増えた。
 「うちの国、えらく肉食だなあ…他の藩国は稲作とかやってるのに」
 「でもいつまでも狩猟採集生活じゃちょっと…」
 お気楽な猫とは言え流石にこのままでは10000年前とあまり変わらない。
 しかし、国の大部分は密林に多い尽くされている。
 「だから根付かないんだよね。農業。
 うーんやっぱり国を挙げて農業政策しないとね…。よし決めた。執政!執政いる?」
 「執政のお二人なら今ピラニア缶の開発をしていますが」
 通りかかった綸子が答える。抱っこされている阪もいた。
 「政務を人に押し付けて…何の為の執政制度だか。
 まあその分吏族が優秀だからいいけど。
 これ、皆にお触れとして出しておいて。作業員は日の出と共に集合ね。」
 半紙に筆でさらさらとお触れを書き、抱っこされている阪に渡す。
 「承りました」
 綸子の腕の中で阪はぺこりと頭を下げた。
 こうして秋春藩王から「農業政策の一歩として国を挙げて開墾をする」という声明文が国中に出された。
 
 翌日5時半。
 早くもお昼の配給を食べながら答える忌闇。
 「なんで戦争前なのに畑仕事なんかしなきゃいけないんだろう?」
 朝も早くから起こされ、あくびをかみ殺しながらいう清白。
 「腹が減っては戦は出来ぬよ。」
 「そうじゃなくて!軍隊だから戦うのが仕事だろう!アパーム!弾もってこい!」
 しきりにパイロットのブーツを見ている鴨瀬が答える。
 「だからそこらじゅうに生えてる密林や岩と戦うんじゃないか
 (あの蒸れそうなブーツの下に有るソックス…イイ!スゴクイイ!)」
 「いや、そうじゃなくて…」
 「まあまあ、世の中には雪下ろしや米作りしてる軍隊さんもありますよ?」
 「そうそう、人殺すのだけが軍隊じゃないのよ」
 格納庫の鍵を持ってきた吏族たち。阪は天狐に肩車されている。
 「うーん、装備はどうしましょう?」
 「わんわんの所みたいにI=Dに草刈用の鎌がついてれば良かったんだけどな。」
 ふと唐草文様の手ぬぐいをほっかむりをして鎌を持つアメショーが思い浮かぶ444。
 「いや…それはどうだろう…?」
 ぽんと手を叩く忌闇。何か名案を思いついたようで電球が頭の上に幻視出来そうだ。
 「あれだよ!キャットバスケットで空から枯葉剤をまけばいいんだよ!そうすればこんな早起きしなくてすむよ!」
 「ばか。」
 天狐の肩の上から阪は冷静に突っ込んだ。
 
 ピーッピーッピーッ
 「おーらい、おーらい!」
 格納庫から新型I=Dが取り出される。
 「アメショーなんか持ち出してどうするの?」
 たちばなが自分も仕事するのか…とうんざりしながらいう。
 「木や岩を引っこ抜くそうで。」
 方向を指示しながら答える444。
 「そんな事しなくたって」
 吏族集団の中、唯一の男を指すを橘。
 「マッスル吏族ボーイの天狐さんがいるじゃないか。」
 「あー」
 「ほら、パイロット要らないよ俺帰るわ。じゃね。」
 と本気で帰り支度をする。
 「いや、一瞬納得したけど無理だって。」
 
 準備を終え丁種装備でブリーフィングに集合した面々。
 秋春藩王が開拓の計画を説明する。
 「と言う訳でこの区域の森林を伐採します。」
 「第一段階としては木を切ります」
 「しつもーん。いきなり火炎放射器でやきはらうんじゃないんですか?」
 元気よく手を上げる忌闇。
 「それだと森が全部燃えるね」
 「だってそれが目的じゃん」
 「それだと生態系が壊れるでしょ?」
 「猿とかワニとか鳥からまた苦情が。」
 「今回だって大変だったんだよ?
 藩王様が苦労して猿やワニを説得して娯楽10万tと引き換えに引っ越してもらったんだから」
 冷静に突っ込みをいれる吏族たち。
 おおっ、と手を打つ忌闇。
 「その所為でakiharu通信の最新号が来ないのか!」
 「嘘です」
 ぺろっと舌を出して答える阪。
 「でも避難勧告は本当に出しましたよ。」
 
 ブリーフィングも終え、実際に密林に入る。
 大声で指示を出す秋春藩王。
 「二人ペアになってください!
 木を倒すときはちゃんと倒す方向を考え、倒れるぞと大声で叫んでくださいね!」
 
 鴨瀬・444ペアの場合
 両側から斧を入れ終わり、最後の一振りを鴨瀬が入れる。
 メリメリと大きな音を立て444の方に倒れる木。
 「たーおれーるぞー」
  間の抜けた声がドーンという音と共に響き渡った。
 「ちょっとまて。」
 「なんでしょう?」
 「そういうのは倒れる前に言うもんだ!」
 「あ、そうなんですか?てっきりそういう宗教かと」
 
 橘・忌闇ペアの場合
 最後の一振りを忌闇がいれる。
 本来パイロットである橘はこっそり帰ろうとしたのが失敗し、
 こちらに回されていた。
 「たおれーるぞー」
 メリメリと音を立て橘の方へ木が倒れ始める。
 猫士兵士並の素早さで慌てて避ける橘。
 「なんで俺のほうばっかりに倒すんだ!」
 「だってちゃんと倒す方向を考えって、藩王様が言ったじゃないですか」
 「ほほう、考えてやってるのか?」
 「だってー折角倒れるならー日頃の恨みをー」
 「俺が一体何をした?!」
 心外な!という顔をする橘。
 「あんたピラニアの時のこともう忘れたのか!」
 「スケッチに夢中で。」
 
 「いいな。あっちは楽しそうで」
 アメショーに乗る清白はうらやましそうに見ながら
 藩王と一緒にせっせと木を引っこ抜いていった。
 
 一方こちらは吏族三人集。阪はなぜか斧ではなくなたを持ってご機嫌である。
 ちなみに密林の中だというのに綸子はピンヒールを履いてきている。
 「困りましたね」
  「どうしたの?綸子」
 「岩が邪魔で木が倒せないのよ」
 「アメショー頼めば?」
 「地形が入り組んでて無理そうなのよねー」
 どんと胸を叩く天狐。
 「俺に任せてください!」
 「おおっー」
 岩をぐっと押す天狐。1・2・3…。満面の笑みを浮かべて振り向く。
 「無理でした」
 「あきらめるの早いわよ!」
 
 区画の森林を切り終えた所で次は焼畑である。
 尻尾と猫耳をピンと立てる忌闇。右手には松明を持っている。
 「風向きはー」
 「あっちか!」
 「それでは、点火します」
  密林にともる炎。歓声が上がる。
 「おおっー!」
 「もーえろよもえろーよ」
 「ってさぁ、うちら風下じゃない?」
 「そうだね。さっきから煙が目にしみるよ」
 「このままじゃ巻き込まれるんじゃない?」
 「あ。」
 慌てふためきだす一同。
 「さっき何の為に風向きを計ったんだ!」
 「だって火を放つ時は風向きを図れってってばっちゃが!」
 「はかるだけじゃだめだろ!」
 「転進!転進!これは退却にあらず!」
 煙に巻かれほうほうの体で逃げ出す面々であった。
 
 こうして農業政策の一歩目である開墾が終わった。
 
 後日談。
 ふんふん、と上機嫌で開墾地へと向かう忌闇。
 「ツナ缶のなる木を植えてツナ缶倍増頑張るぞー!」
 天狐と肩車された阪が忌闇を見送る。
 「止めなくていいんですか?」
 「今更無理。」
 
 こうしてスイカが大量に収穫されました。
 「なんでー?!」
 
 収穫物:スイカ

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