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経済復興への挑戦SS

経済復興への挑戦SS

作:田中申

某月某日、にゃんにゃん共和国の暫定政権は経済復興を議題として会議が開かれた。 その結果、akiharu国は二億にゃんにゃんの資金と、食料、資源、燃料をそれぞれ二万トン出すことになった。 akiharu国には整備不良のアメショー二機とその装備、および装薬の使用期限がヤバイ(たとえるなら賞味期限を一週間過ぎた牛乳くらい)の弾丸がだいたい二万トンぐらいあったので、それを資源として提出しようと藩王様は考えていた。

――ただ出すのはもったいない。

 そう意見したのは猫士のゴダイゴであった。 この猫が言うには、アメショー二機を標的に、使用期限ギリギリの弾丸を使って演習しようとのことである。 ちょうど執政の444がアイドレスを泥棒猫からドラッグマジシャンに着替えたばかりだから、というのも理由であった。 それに便乗したのが、忌闇装介である。

「もっと畑を開拓しよう」

 こうしてアメショーによる演習は、開拓を兼ねて、森のどまんなかで行われることになった。 どうやら、忌闇は食糧増産作戦で阪明日見が渡した種を、いまだにツナ缶の木の種と思っているようらしい。 スイカだったという事実は若年性痴呆で忘れているようである。 ちなみに、akiharu国はプライド・オブ・ツンのどさくさで、リマワヒ国から援助でもらったツナ缶を数十缶ほど余分にせしめていたが、あっという間になくなった。

――どう、いけそう?

 コパイのふじこが444に向かって、そんな感じの鳴き声をあげる。 同じくコパイのゴダイゴが、代わりにニャーと答える。 渋い低音だが、肯定的な響きを感じさせる、そんな声だ。 444たちが乗っているアメショーは7.62mm機関銃を両手に装備している。 的になるI=Dは増加装甲板を装着しており、7.62mm程度の銃弾では、たいしたダメージはない。

「準備できました?」

 仮説指揮所から鈴木が聞いた。 天狐たち吏族は仕事で忙しく、444以外のパイロットは薬でぐるぐるしていたので、オペレーターをやらされていたのだった。

「できたよ。ところで向こうの機体、誰か乗ってるの?」

「いや、無人のはずだよ」

「じゃあ、なんで動いてるんだ?」

 木に登り、確認する鈴木。 スコールで視界はあまりよくないが、たしかに二機のアメショーは動いていた。

「おかしいな。燃料は抜いていたって聞いたから、動くはずないんだけど」

「でも、動いてるよ?」

「うん、動いてる」

――熱センサーには反応がないようだが。

――変ね。いくらセンサーに劣るアメショーでも、動力に火が入れば、雨の中でも分かるはずだけど。

 突然、アメショーの右手が輝きだす。

「精霊手!?」

 驚く444。 急いで、射線上から退避し、攻撃を行う。 しかし、長時間の歩兵支援を目的とした7.62mm機関銃では小破にもいたらない。

――よく見なさい。あれは精霊手ではないわ。

 ふじこに言われ、444は画面を注視した。 敵機の関節の隙間からツタのようなものが確認できた。 人工筋肉を使っていないI=Dにそんなものが見えるということは、それはつまりakiharu国の獰猛な大自然が、内部から操っているのだろう。 おそらく、きたかぜゾンビやうみかぜゾンビに代表される寄生科の幻獣のように。

 よくよく考えれば、精霊回路もないアメショーが精霊手を撃てるわけがない。 光る植物なんてのが遺伝子操作で作られるらしいから、まあ、自然にそういうのがいてもおかしくないだろう。 だが、原因が分かったところで事態の解決にはぜんぜん役立たない。 現実に二機のアメショーが動いている。 444が攻撃したから、こちらを敵と認識していると考察できる。

――考えている暇があったら動かせ!

 ゴダイゴの怒号がコックピット内に響く。 気がつけば敵はこちらに接近していた。 444のアメショーはとっさに回避運動を取りながら、装甲の間隙を狙って銃を乱射する。 7.62mm機関銃は装弾数1200発もあり、稼働時間よりも早く弾切れを起こす心配はない。 だが、敵の損傷は微々たるものだ。 パイロットたちは全員すでに何本か薬を投与しているのだが、さすがに二対一では分が悪いらしく、決定打を与えられないでいる。 派手な動きで跳びまわり、隙を突こうとしているのだが、厚い増加装甲板がそれを邪魔するのだ。 泥が関節に入り込み、ガラスにひび割れる。

「こんな無茶な動きしちゃって、あとで整備大変だな」

「まあ、いつもみたいに藩王様にやらせればいいでしょ」

 akiharu国の国民はデフォルトでひどい。 どれくらいひどいかというと、機会さえ与えれば藩王様を本気で殴ってくるぐらいひどい(詳しくはakiharu国の50人動員準備(その2)を参照)。

――黙って動かせ!

 パイロットよりもコパイの方が、えらそうである。 背後から感じるゴダイゴの気迫は、ちゃんとした軍隊の隊長レベルはある、と444は感じた。 akiharu国の軍がちゃんとしてるかどうかは、明言を避けたい。

「助けに来ましたよー」

 上空からキャットバスケットが現れる。 鈴木を除く、泥棒猫たちだ。

「武器を落とすから受け取ってくださーい」

 八連装のATM(アンチ・タンク・ミサイル:対戦車ミサイル)を高度数百メートルから投下する。 どんどん加速をつけ、それは444の機体の数メートル前方に落ちた。

「ちゃんと拾ってくださいよー」

――無茶を言う。あの落下位置でどうやって取れというんだ?

 アメショーにそれほどの機動力はなかった。 また、仮にあったとしても高度数百メートルから落ちた武器をキャッチできるほど、丈夫ではない。 さいわい、ミサイルは暴発していない。

――気をつけて。

 武器に気を取られているうちに敵は、思いのほか近くまで来ていた。 数発の格闘で444のアメショーはかくざした。

――コックピットハッチを開け。

 ゴダイゴのその声には雄雄しい響きがあった。 言われたとおりにする444。 いつの間にかコックピット内でライフルが組みあがっていた。

――あなたに任せるわ。

 器用にライフルを手渡すふじこ。 人間の長い指がなければトリガーは引けないからだ(「じゃあ、ライフルを組み立てるのも無理じゃね?」というツッコミは断固拒否する)。

 ゴダイゴは黙って指差した。 そこを狙撃しろということらしい。 444は狙いをつけ、そこ、つまりミサイルを狙撃した。

 爆発、爆発、大爆発。 激しい爆破音が響き渡る。 至近距離で食らった敵は大ダメージを受け倒れた。

 キャットバスケットから444らの安否を気づかう泥棒猫たち。 視界が徐々に晴れる。

 444は無事だった。 鈴木と仲良くアフロになっていたり、口から煙をはいたりしたが、まあ、無事の範疇だった。 akiharu国民はギャグ知類がスタンダード、ヒーローショーよりコントな人種なのだ。 作者自身、なにを書いてるかさっぱりだが、ニュアンスで理解してほしい。

 なお、akiharu国の国防省が444の転属を正式に発表したのはこの直後である。