小さな平原で向かい合う二人がいた。
周囲は密林で覆われ、逃げ道はない。
経緯は不明だが、田中申と和志は戦うことになった。
別に考えるのが面倒だったからとかそういうことは……ゲフンゲフン
まあ、ともかく戦うことになった。
「えいにゃー」
肩にかついだロケット砲をぶっぱなす田中。
噴煙が出しながら飛ぶ弾頭。
和志はジャンプ三回転ひねりで回避、遠くの木の枝に着地した。
遅れて後方で爆発音が鳴る。
ゴーグルの奥に潜む和志の眼球は、なにげにぐるぐるしていた。
もちろん、ドラッグである。
「じゃあ、こっち」
田中は懐中からペッパーボックスリボルバーを取り出し、引き金を引く。
暴発して6発同時に弾が出る。
が、和志は跳んでいた。
まるでカンフー映画のパンチのように、避けてできた空間に、攻撃が来る。
だが、田中は、和志の行動を読んでいたかのように、二丁目の拳銃を取り出し、着地予想地点に弾丸を叩き込む。
最初の6発はおとりだった。
なんかキャラ的にちがうくないとか思うかもしれないけど気にするな。
「甘いぜ」
和志はマフラーをたぐりよせた。
空中で停止する。
あらかじめマフラーを枝にくくりつけていたのだ。
うっかり失敗すると、頸骨が外れてグロいことになってしまう、危険な作戦である。
しかし、田中には、3丁目の銃があった。
止まった的に撃ち込む。
和志はマフラーを手刀で切断し、下に落下する。
だが、さらに田中の4丁目が火を噴く。
ご都合主義万歳である。
「出ろォォオオッ、士魂号ォォオオッ!」
指を鳴らして機体を呼ぶ。
地面が割れ、現れるローテンシュトルム。
電撃文庫のガンパレード・マーチ、通称榊ガンパレで、荒波壮一郎が愛機とした、赤い士魂号である。
その厚い装甲が銃弾を弾き返した。
一跳躍で和志はコックピットに入り込む。
「俺が主役だー!」
ジャイアントバズーカを構えるローテンシュトルム。
赤い機体で和志のテンションは+3シフトである。
多目的結晶も多目的リングもないが、そこは目をつぶってほしい。
「僕もいくよー」
のんきな声で田中は腕をあげた。
指を鳴らそうとして二回スカる。
気まずそうに、おずおずとデュマが参上する。
全長9mの甲殻型ウォードレスである。
「あのー、akiharu国のアイドレスに戦車兵もウォードレスダンサーもないですよね。ウォードレスって着れないんじゃ……」
デュマがツッコんだ。
ウォードレスがしゃべってるのもツッコみどころだが、そこは気にしてはいけない。
田中は口を開いた。
「うん、そうだね」
田中申は成功を忘れる。
だから、おごりがない。
田中申は失敗を忘れる
だから、おそれがない。
田中申は後悔をしない。
だから、誰よりも早く最初の一歩を踏み出せる。
その田中の腕が天を指す。
振り下ろされると同時にウォー・エンジェルが落下する。
根源力8000の人型人騎兵である。
ちなみにデュマは下敷きになった。
「あのー、akiharu国に魔法使い、いないですよね。乗騎の絶技も持ってないし、田中さん、乗れないんじゃ……」
田中申は反省をしない。
だから、同じ失敗を繰り返す。
くどいほど天丼な男なのだ。
「いい加減、攻撃していいか?」
律儀に待っていた和志。
akiharu国のギャグ体質は、同国民の戦意を-4シフトさせる、限界突端なロールプレイなのだ。
意味がわからない人は、そのままのキミでいてほしい。
「あ、撃つの、ちょっと待って。こっちが先に攻めるから」
のんびり口調の田中を無視し、ジャイアントバズーカを撃つ和志。
「藩王バリアー」
いつの間にか藩王様を盾にする田中。
田中は、決めたことをする男である。
助けると決めたらタマでも助け、倒すと決めたら阪明日見でも倒し、食べると決めたら執政のツナ缶でも食べる、そういう男なのだ。
もっとも、目の前にすでにあるデュマやウォー・エンジェルじゃなく、あえてフレーバー耐久力無敵の藩王様を持ってくる辺り、判断力に問題ありである。
なお、どこからどう引っ張ってきたかは深く考えてはいけない。
「……という夢を見たんだけど」
参謀仕事で入院中の藩王様が言った。
「そうとう疲れてるんですね。安静にしてください」
新国民のリバーウィンドは優しい目をしていた