FrontPage 新規 編集 検索 一覧 ヘルプ

打倒!藩王様

打倒!藩王様

作:阪明日見

 
 /////////
 
 打倒!藩王様
 
 /////////
 
 さきの北海島迎撃戦の陸軍召集。
 これによってakiharu国の財政はこれでもかというほど逼迫した状況に陥った。
 食料増産命令で、なんでか人口より6万tくらい多く狩った食料ぐらいしか残ってなかった。
 しかし、akiharu国民には持ち前の気楽さと明るさがある。
 そんなわけで国は勝利と、制裁金帳消しと、新アイドレスとで一気に宴会モードへと突入したのであった。
 
 その翌日、新アイドレス何にしよう?と国民投票が平和的に行なわれている裏で、その会議は静かに始まった。
 
 病院の地下開発室の更に奥、厳重に隔離された実験室の中の前。
 東西天狐は吏族しか知らない暗証番号を、なにやらドアのところに付いている機械に入力した。
 ぷしゅー、といってドアが開く。
 「遅れました、スミマセン!」
 いや、会議は静かに始まらなかった。天狐は元気一杯におはようございます、と言って入ってきた。
 「寝坊ですか?昨日は飲みすぎですよ」
 綸子が窘めるのも無理はない。
 東西天狐は戦勝祝賀会にてドラム缶飲みという恐ろしいことをやってのけていた。
 「いやぁ、完全勝利の夢で良く眠れました」
 そう天狐は爽やか笑顔で返した。もうぜんぜん二日酔いとかしてない。
 
 天狐が席に付くと綸子が皆を見回しながら言った。
 「それでは第三回吏族会議を始めます」
 ぱちぱち、と僅かに拍手。
 「さて今回の議題は、阪さん?」
 はい、といって阪明日見が大きなクリップボードを取り出す。
 どうでもいいが、彼女には机が大きすぎて、頭ぐらいしか机の上に出ていない。
 「前の在庫チェックの際、我々の研究室から大量のキノコがなくなっていることがわかりました。」
 クリップボードには前の在庫と今の在庫のグラフ。なんか明らかに減っている。
 「そして捜査の結果、これを盗難と断定。そして犯人が判明しました。言わずもがな、」
 「藩王様ですね」
 「藩王様だ」
 間髪入れずに二人が相槌を入れる。
 「証拠として数々のキノコ使用の目撃証言があります」
 「というか我々も見てます」
 「よく開発室に来ると思ってたら、毎回キノコを盗っていたんですねー」
 というわけで、と阪がしめる。
 「藩王様対策を議題としてここで挙げたいと思います。」
 ぱちぱちぱち、とさっきより大きい拍手が鳴り響いた…。
 
 「とりあえずこれ以上のキノコの在庫減少は痛いです。唯でさえ財政かつかつなのに」
 新たなクリップボードを阪が取り出す。そこには我が国の財政状況が書かれていた。
 「それじゃぁこの部屋に在庫を移動させましょうか。ここのセキュリティーは万全ですから」
 この実験室は吏族のみ知っているパスワードがなければ入れないようになっている。
 もともと動物愛護団体とかのスパイが入れないようにするためだったが、今はこの会議を極秘に行なうために使っていた。
 「それは天狐さんにあとでお願いするとして、今は藩王様自体をお止めしないと」
 「藩王様の健康状態も心配ですしね」
 と綸子。はぁ、と大きな溜息。彼女の仕事は藩王の健康管理である。
 「今のままでは不健康です」
 と天狐。藩王様はもっとパイロットとして鍛えるべきだと思っていた。
 でも、と大きく首を傾げる。
 「状況証拠だけで物証がありません!言い逃れされそうなんですけど。」
 大きく頷く阪。
 「やっぱりここは現行犯しかないです。研究室に囮を置いておいて、隠れて見張りましょう」
 ということであっさり会議は終了した。
 
 この後、開発室にダンボール1箱分を残して、天狐がすべてキノコを実験室に移動し、準備は万端。
 あとは藩王様を待つのみとなった。
 
 そして小一時間経過。
 「来ない…」
 「来ないですね…」
 「よく考えたら、これ藩王様来るまで待たなきゃですよね…?」
 3人は運が悪かった。今は皆新アイドレスの設定を天領に送るのに忙しかったのだ。
 「こうなったら向こうに情報リークしましょう」
 「でも下手にこちらの手をばらすのも…」
 
 小会議の末、大族の鈴木に頼むことにした。
 一つ難点なのは彼が藩王と旧知の仲だということ。もしかしたら逆スパイになるかもしれない。
 でもまぁそれも、「鈴木さんも猫士だし、ツナ缶で買収できるのでは?」の一言で蹴りが付いた。
 実際打診してみると
 「まぁ、藩王がドラック漬けっていうのもどうかと思うしね」
 と快く引き受けてくれたのだが。
 
 これで「新種のキノコが開発室にあるらしいよ!吏族は今皆仕事で出払ってるよ!」
 的な内容が藩王に伝わったはずだった。
 「フフフ…、捕まえたらこの新開発のドラックを…」
 なにやら怪しげな注射器を取り出す阪。
 「いや、それじゃ結局止めても変わらないですから」
 「しっ、誰か来ます!」
 言ってることと逆に大きな声で天狐が言った。
 確かに部屋の外から足音が聞こえる。
 
 「いい?キノコをとろうとしたところを捕まえるのよ」
 息を潜め、藩王が部屋に入ってくるのを隠れながら待つ三人。
 しかし足音は開発室の前を通り過ぎていった。
 「あれ、おかしいですね…藩王様じゃなかったのかしら?」
 綸子がちょっと隠れ場所から頭を出してあたりをうかがう。
 足音はさらに奥へ向かっていく。ぷしゅー、という音。
 「しまった、実験室をやられた!」
 「でも何故、暗証番号を!?」
 このとき彼らは知る由もなかった。
 藩王自身がさっきの会議の天狐が入ってくるところから、すべて幽体離脱で観測していたということを。
 「とにかく追いかけましょう、今ならまだ間に合う!」
 
 慌てて開発室を出て、実験室へ向かう。
 丁度そこには実験室から大量のキノコの箱を抱えて出てくる藩王様が。
 「とうとう尻尾を掴みましたわよ、藩王様!今度こそドラックを止めてください」
 と叫ぶ綸子。しかし、なんということだろう。何故かパイロット姿の藩王、そしてその肩には青い薔薇が。
 目が点になる一同。
 実は藩王が第一号の新アイドレス、ドラックマジシャン。
 この資料作りのため、藩王自らモデルとして今まさに撮影中だったのだ。
 「ドラックマジシャンになった今、僕にはキノコがもっと必要なんだ!だからこれは貰って行くよ」
 と言ってとった真っ青のキノコを口に放り入れる。目がさらにぐるぐるになる。
 そしてそのままうぉーーー!!と叫んでこっちへ突っ込んできた。
 「止めるのよ、天狐さん!」
 何気に人任せだが阪が叫ぶ。
 「わかりました!!」
 突っ込んでくる藩王の前に立ちふさがる天狐。こちらもうぉーーー!!と叫ぶ。
 だが、くらすちぇーんじした藩王はそのキノコパワーで天狐をふっ飛ばし、あっという間に政庁へ去っていった…。
 
 「くっ、惨敗…」
 「ああ、もうこれからどうすれば…」
 これからドラックマジシャンとなった藩王を止めることはいっそう難しくなるだろう。
 体調管理とか言ってる場合じゃないくらいやばくなってるし。
 ということでめちゃくちゃ先の未来に不安を覚えた3人であった…。
 
 次回(やるのか?)、打倒!王立商品開発部

多目的展示室へ