偵察1
偵察(作:阪明日見 画:忌闇装介)
(はぁ、面倒臭いなぁ…真っ暗で全然前も見えないし)
清白は頭をぽりぽりとかきながら音もなく暗闇を移動する。明かりを極限にまで絞ったためか、目が全然回りに慣れていないのだった。
目を閉じて耳を澄ます。後方にいる仲間達の息遣いが聞こえる。では、それ以外は…?
(なんにも聞こえないねぇ…本当に敵なんかいるんだろうか)
とりあえずこの時点では敵はいないらしい。ということは聞き耳を立てる必要もなく、観念して目を開ける。どうやら目のほうも暗闇に慣れてきたようだ。
(さて、行きますか。急がないと)
慎重に冷静に。実は頭の切れる彼の行動は、動きに無駄がなかった。超薬戦獣の有り余りすぎて使いどころのない筋肉を、実に上手に使う。ちょっとやそっとの障害は軽く乗り越え、しかも音をほとんど立てないで移動できた。
(マジックアイテムとやらはどうでもいいんだけどね、僕は。国に早く帰りたいなぁ。)
曲がり角に来た。壁を背にして慎重に向こう側を確認。一瞬緊張がはしるが、どうやらここにも何もないようだ。一安心して先へ進む。奥には闇が広まるばかり。
(こんなところに住み着く奴らの気が知れないね。まったく)
この闇自体を見つめて、清白はそう呟いた。この地下は普段は完全な、光の一筋も入ってこない闇なのだろう。…清白は急に暗闇が恐ろしいものだということを思い出して身震いした。
(…いけないなぁ、こんなことじゃ、皆が待っているんだ)
気を取り直して先へ進む。この先に待っているものは果たして敵なのだろうか、それとも…?