まだ誰を攻撃するか知らないころ。
藩王様は準備で忙しい国民たちを集めてこう言った。
「いいことを思いついた。お前たち、俺を殴れ」
突然何を言い出すんだと思うみんな。
一人だけ、迷いなく猫パンチをする。
田中申である。
「……なんで殴るんですか?」
――殴る前に聞けよ!
一同、心の中で総ツッコミ。
「よし、お前は一週間、営倉行き決定」
「うちに営倉なんてありましたっけ」
「まあ、生きて帰って来いってことじゃないですか」
「まわりくどいなー」
でも、こんな機会じゃないと殴れないなあということで思いっきり殴ってくる国民。
さすがドラッカーと泥棒猫のakiharu国である。
「あの……誰かに私物でも盗ませて、全員連帯責任でトイレ掃除一週間とかにすればよかったんじゃないですか」
「あ!」
藩王様、殴られ損である。
「それはともかく、罰を与える側も帰ってきてもらわないとダメですよね」
そう言うと阪明日見が服の袖を渡す。
「戦場で吏族として働くことはなさそうですしね」
綸子も袖を渡す。
「この流れで一人だけ渡さないのも変すかね」
東西天狐も続く。
「みんな、帰るまでが戦争だぞ。長い一日になると思うからしっかり準備しておくように」
「せんせー、速攻でやられて後方で入院ってありですか」
「私、臨床より予防が得意なんですけど」
綸子がそう言う。
「大丈夫。私の専攻は法医学ですから」
続く阪明日見。
「法医学ってなんです?」
「検視解剖とか司法解剖とかそんな感じ」
「それは視(み)てほしくないね。看護婦や女医さんとして診るんなら望むところだけど」
「というわけでケガは絶対ダメということで」
彼らがタマ襲撃作戦を知るのはこの一時間後であった。
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