タマ大統領邸襲撃計画を知らされてある程度経ったころ。
綸子は田中申を会っていた。
阪明日見はいつも通り綸子に肩車されている。
「これなんてどうでしょう?」
「そう? こっちのほうが似合うんじゃないかしら」
女物の服を見て話し合う女性二人。
この時点ではまだ偵察部隊か突入部隊に配属されるか決まっていなかった。
偵察部隊に入れば、変装する必要があるかもしれない。
そのため、二人は田中が衣装を選んでいた。
もちろん女装させたら似合いそうという気持ちも半分くらいあったことは言うまでもない。
幸い、田中は服装には無頓着なので、すんなり話しに応じてくれた。
もっとも、化粧や香水は拒否したが。
田中にとっては化粧も薬のようなものと思っているらしい。
「あの質問なんですけど……」
そう言って口を開く田中。
「鴨瀬さんや忌闇さんは変装しなくていいんですか?」
純真な目で下から見つめ問う。
純粋な馬鹿は純真無垢に似ることもあるらしいが、このときの田中の瞳はまさにそうだった。
自分の欲望も入っていた阪と綸子はちょっと罪悪感を感じる。
「そう……ですね。二人にも着せましょう」
田中の女装をやめさせるという選択肢を選ばない。
さすが、裏番長と呼ばれることはある(全然関係ないというツッコミは不許可)。
「そういうわけで、これを着ていただけないでしょうか?」
「どういうわけ!?」
なぜか阪と綸子に壁に追い込まれている装介は叫んだ。
その回答に、綸子は無言でメスを投げる。
音速を超えるメスが断熱圧縮による発熱で気化する。
さらに、それでもなお持つ高い運動量が、忌闇のすぐ横の壁に穴をうがつ。
大口径の散弾銃で強装弾を接射したような大穴だ。
ついでに衝撃波で照明が盛大に割れた。
ガラスのシャワーが頭上に降り注ぐが、忌闇は動くことができない。
次弾のメスが綸子の指の間に装填された。
アウドムラ迎撃戦祝勝会で見せた秒間120本のメス投げを忌闇装介は思い出した。
ちなみに、噂によれば、アイドレス産業に経理されている資源の何割かは、 メスの大量生産に使われているらしい。
「着る! 喜んで! 是非とも着ます!」
若干おかしい言葉遣いで返答する。
阪はにこりと笑って箱を渡した。
中にはakiharu国ではあまり着られることのない、長袖、ロングスカートの婦人服が入っていた。
顔が隠せるようにとベールと帽子もおまけされている。
「じゃあ、お願いしますね」
のちに忌闇装介は女装したまま作戦に参加するが、それが若年性痴呆によるものか、二人への恐怖によるものかは定かではない。
「あとは鴨瀬さんだけですね」
鴨瀬高次。
ソックスハンターが一人、ソックスアイロン。
泥棒猫ということもあり、逃げ足の速さはakiharu国でもトップレベルに位置する。
また、成人の儀式では目にも止まらぬアイロンさばきを見せた。
おそらく強敵になるだろう。
そう予想する二人。
だが、彼女らはまだ知らない。
ラッピングされ、パワーアップした鴨瀬を。
次回「綸子VSラッピング鴨瀬! 史上最速の闘い!」
すべての力を解き放て、鴨瀬!
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