“この機体、人型にする意味あるんですか?”
“肝心な場面で止まらない。それだけで十分だと思わんか?”
──設計図を見たメカニックのやりとり
グラシン紙:トレーシングペーパーに使われる紙の一種。
人の指示をトレースするものという意味で名付けられた。
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種別 | 宇宙用無人機 |
搭乗者 | なし(母艦からのオペレート操作) |
固定装備 | 腕部レーザー砲 ×2 |
発動機 | 対消滅反応炉 |
主推進機 | 対消滅ロケット ×2 |
副推進器 | 電気推進式プラズマロケット ×6 |
本機体は機能を極限までカットしている。
有人操作を切り捨てることでパイロット保護を不要とし、
腕部はまるまるレーザー砲にすることで射撃戦のみ対応とし、
脚部に見えるは燃料タンクとサブスラスターとランディングギアの複合でしかない。
つまり、燃料さえあれば腹から下は無くても動くという酷い設計なのだ。
それでも人型にしているのは敵が人型以外停止を使用してきたときの対策であり、それ以上の意味はない。
人型機の強みは一般的にその汎用性故であるが、本機はそれに相反する設計である。
しかし、無人機というカテゴリであればそれも許される。
高度な汎用性はAIの判断速度を低下させるだけであり、
AIを強化しすぎることもまたTLOへの道である。
可能な行為数を減らすことでコストを減らし、大量投下した後の陣形戦術により戦場を掌握する。
それが本機の運用則である。
メイン推進装置及びエンジンは背中に背負った双発対消滅ロケットエンジンである。
胸部に格納されている反物質に、脚部燃料タンクから供給される水を反応、
電力を起こすと共に余剰の水を噴射することで推力を得ている。
なお、対消滅の際生じる放射線はTLOを使わず、鉛などのシールドで封じられている。
それとは別に、両肩に1基ずつ、両脚に2基ずつの電気推進式プラズマロケットエンジンが配されている。
電気推進式エンジンは推力こそ弱いが、宇宙空間での方向転換用サブ推進システムと使うには悪くなく、
また被弾時誘爆する恐れも少ない。 本機が「最悪でも動体さえあれば動く」とされるのはそれ故である。
なお、無人機の強みとして、本機は生身では到底耐えられないような速度を標準速度とする。
高速機動と陣形戦術により、無人であるデメリットを打ち消すのだ。
本機の腕部は肘から下がまるまる大口径レーザー砲となっている。
それ以外の武装は存在しない。
と、いうのも宇宙戦では遠距離射撃戦以外はほぼ不要であり、
例外として必要となる要塞戦はメタルコート、対空戦はフェイク3で可能である。
つまり、あれもこれも出来るようにする必要性はまったくなく、
その低コストを武器に量産することで軍勢としての能力を引き上げる事こそが本機の在り方である。
頭部及び肩に装備されたブレードアンテナをメインに、
光学・赤外線・振動等各種センサーを搭載。
共和国側の“ヘイムダルの眼”と類似した運用も将来的に見据え、
またAIの判断ミスを軽減するために索敵に関しては力を入れて作られている。
本機は母艦/司令部からのオペレート操作を前提に作られている。
共和国側のヘリオドールに見られるような、有人指揮官機の存在は
むしろ1機「性能の劣る」機体を出現させるために想定外とされた。
本機は母艦の拡張装備であり、それ以上でもそれ以下でもない。
人型以外停止を使用する敵、或いは数で攻めてくる相手に対し、戦艦の出来ることはあまりにも少ない。
故に無人機が必要とされたのである