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bouken01-2

39:男だけのソックスハント (第1回派遣)

参加者

レポート(作:鴨瀬高次)

 akiharu国は小国である。
 元は二人と猫しか居なかった。
 しかし、根源種族の襲来とともに、藩王は合併か、消滅を余儀なくされた。
 時の藩王、涼原秋春は隣国ながみ藩王からの吸収合併の申し出を受ける。
 秋春はこれを是とせず、大々的な国民募集キャンペーンを行う。
 と、同時に国の大改修を始めた。国民の皆が、国を簡単に変えられるようにしたのである。
 そしてakiharu国は再び国力を取り戻そうとしていた。
 そんな頃の話である...
 
 1月5日深夜 akiharu国王宮地下
 
 深夜に一人、無線機の前にたたずむ男。辺りは深淵の闇に包まれている。
 謎の声1「ピーガッガッ、今回の標的は?」
 謎の声2「akiharu国軍用特殊靴下猫士仕様10万tです。」
 謎の声3「ガガガ、ククク、スバラシィ!スバラシイ!」
 謎の声1「では、ソックスアイロン」
 ソックスアイロン(?)「はっ。」
 謎の声1「此度の任務に命ずる。」
 謎の声3「確かにこやつなら国の民。バレることはなかりましょう」
 ソックスアイロン「かしこまってございます」
 
 同日、akiharu国、吏族会議室
 裸電球が煌々と照る地下室。
 
 akiharu国における度重なる靴下の被害に対し、風紀委員会はakiharu国吏族に協力を要請。
 盗まれた靴下の補充予算にほとほと困っていた吏族達はこれに同調。
 ソックスハンター対策として風紀委員会から星月ハルという少女が派遣された。
 黒髪のおさげに厚底眼鏡をかけ、ちょっと野暮ったいする感じの少女である。
 中学校では、学期の初めなどでクラスの雰囲気で本人の知らない間に委員長になっていそうなタイプであった。
 かくして、1月の靴下事件が幕を開けた…。
 
 ハル「このままでは国の風紀が乱れます!」
 阪「すでに今月に入ってから、靴下の損害は30万tに。」
 綸子「このままでは被害は増大する一方です。藩王、ご決断を!」
 秋春「...仕方がない、非常事態宣言を発令する。全国民はソックスハントに対し、昼夜を問わず警戒する事。」
 444「藩王様、よろしいのですか?最悪の場合、我が藩国の3分の2が焦土に」
 秋春「かまいません。逆らえば、我が国が崩壊します。見なさい。」
 
 目をぐるぐるさせた吏族達が、ピンヒールをひっかけてバタバタと指示を出している。
 綸子「藩王の御聖断がでました!アラートフェイズワンへ移行!」
 阪「全吏族は、ソックスハントに対し、最大限警戒すること!ソックスハンターを見つけた際は直ちに委員長に通報!全力を持ってこれを排除します!」
 綸子「ふふふ、1年前に盗まれた吏族の儀式用靴下10万tの雪辱、ここで晴らしますわよ!」
 ハル「捕まえたら、簀の子に巻いて底なし沼に落としてあげるわ!」
 
 秋春「アレに逆らえると思う?」
 444「無理です。」
 
 王猫ふしゃ・ふしゃーるは右往左往する人間たちを小馬鹿にした様に、にゃーとあくびをした。
 
 翌日 akiharu国政調室
 
 秋春「では、本日の会議を始めます。まず吏族から報告があります」
 阪「この度、秋春陛下は御聖断を下されました。我が国はこの度アラートフェイズワンに移行しました」
 ざわめく一同
 阪「静粛に!これはソックスハンター侵入に伴う措置です。これより、akiharu国は厳戒態勢に入ります!」
 444「以上。次の報告に移ります」
 
 同日、akiharu国軍司令部
 
 うだるような暑さの中、うだつの上がらない貧乏学者の容貌をした男が机に突っ伏している。
 清白「暑いー。何で冷房が利かないのー」
 部屋の隅で丸とも、四角とも取れるトポロジー図形を書いてる男が答える。
 橘「団扇があるでしょう」
 清白「そう言う問題じゃないです。忌闇さんはなにしてんの?」
 橘「温泉求めて穴掘ってます」
 清白「この暑いのに?平和だねー」
 橘「あ、王様から伝達が来てました。アラートフェイズワン、厳戒態勢だそうです」
 清白「ふーん。じゃ、気をつけようかー」
 橘「そうですねー、あ、何か警戒装置にひっかかってますね?」
 清白「また王猫さまが猫缶を盗りにきたんじゃないの?」
 綸子「そんなんじゃありません!」
 忽然と姿を現すハルと綸子。眼鏡で見えないが目がぐるぐるしている。
 ハル「あれはにっくきソックスハンター!ここであったが百年目!」
 清白「あ、あなた方はどこから入ってきました?警戒装置は?」
 ハル「風紀の為には万難を排します!あなた達も風紀委員の指揮下に入ってもらいます!これが指令書です!」
 勝ち誇るように胸を張り、差し出される指令書。上意下達の模範文である。
 橘「うわ、本当だ…」
 げっそりした顔になる二人。
 綸子「うわっ・・・とはなんですか!これも任務のうちです!お国のために死んできなさい!」
 清白「はい、まぁ、やる時はやりますが…」
 綸子「ハンターは現在、村に居るそうです。akiharu軍は甲種装備にて10分後に集合!吏族とともに目標の殲滅に向かいます!」
 
 10分後 村にて
 アイロン「こんなに、警戒が厳しいとは思いませんでした…うかつ。」
 周りには御用堤燈が十重二十重。物珍しさも手伝ってか藩王自らが現場に来ている。
 秋春「えー、逃走中のソックスハンターに告げます。お前は完全に包囲されている!速やかに投降しなさい!」
 444「さすが、藩王様。普段の発声練習の成果が出ていますね。」
 秋春「うん、一度言ってみたかったんだよねー。」
 阪「何を呑気な!」
 藩王から拡声器を奪い取る阪。
 阪「聞け!ソックスハンター!お前の末路は決定だ!地獄よりひどい目にあわせてやるんだから!とりあえず…ええっと、ともかくひどい目にあわせますからね!特殊部隊!強行突撃です!」
 
 吏族と正規軍の混成部隊からなる特殊部隊中隊40名が突入を開始した。
 
 同刻 村の中の軍施設内
 アイロン「私一人ならなんとでも逃げおおせるのですが、10万tのソックスがあっては…」
 唐草文様の風呂敷に包まれた10万tの靴下。アイロンの目の色が変わった。
 靴下を顔に被る。
 アイロン「むーむむむ、むむむむー!(ここで引き下がってはソックスアイロンの名が廃れます!ソックスを待つ10万の同胞の為にも、私は命を賭してこの場を切り抜けましょう!)」
 
 王猫ふしゃ・ふしゃーるはつまらなそうにふさふさの尻尾をふった。
 
 アイロンは、秘儀猫走りを駆使して包囲網を突破。しかし、追っ手が迫りつつあった。
 
 アイロン「ふん、ソックス戦のソの字も知らないようです。よろしい、教育してあげましょう」
 懐から取り出される2週間ものの靴下とアイロン。
 444「あ、あれは!危険です。皆さん下がって!下がって!」
 いま、靴下にアイロンが当てられた!
 スチームがじゅーっと音を立てる。アイロンの熱気と共に異様な空気が辺りに充満する。
 もはや、刺激臭を通り越し、目からは涙がぼろぼろと出てくる。
 兵士たち「ぐ、ぐぐぐふ・・・」
 後に残るは兵士たちの死屍累々。
 アイロン「皆様にはこの素晴らしさがわかっていただけないようで残念です。ではごきげんよう。」
 
 10万tの靴下の入った風呂敷と共にソックスアイロンがその場を悠々と立ち去ろうとしたその時!
 突然聞こえる一発の銃声。ソックスアイロンはソックスブーストにより弾丸を回避する事は出来たが、運悪く、風呂敷の結び目に弾が当たってしまった。
 向かいの家の窓から油断なく第二射を狙う清白。
 清白「だから言ったでしょう。やる時にはやると。」
 辺りに散乱する10万tの靴下。
 
 アイロン「ノォオオオオオオオオオオオオオオオオオー!私の靴下がァアアアアアアア!」
 
 アイロンが取り乱したその一瞬の隙を付き、素早くアイロンに近づく影。
 橘「確保!確保しました!」
 綸子「お見事です!」
 ハル「そのまま風紀委員取調室まで連行してください!」
 
 一時間後 取調室
 ハル「さあ、ソックスハンター。その素顔をあばいてやるわ!」
 ゴム手袋をし、顔に被っている靴下をゆっくりと外していった。
 ハル「あ、あなたは・・・」
 アイロン「ばれてしまいましたか・・・あなたにだけは知られたくなかったのですが。」
 ハルとアイロンは、10年来の幼馴染だったのである。
 ハル「なぜ、あなたが邪悪なソックスハンターなどに・・・!」
 アイロン「あなたもバレエをやっていたならわかるでしょう。ダンスは一瞬の芸術,今この瞬間に生まれた動きは,次の瞬間には消えてしまう。ソックスも同じです。アイロンによって生み出されたソックスの臭いは一瞬の芸術。今この瞬間に生まれた臭いは次の瞬間にはきえてしまう。本当にはかない芸術だからこそ,多くの人をひきつけるのです!」
 ハル「わからない・・・っ!いえ、わかりたくないわっ・・・!」
 首を振り、激しく否定するハル。重苦しい沈黙が二人の間にのしかかった。
 
 しばらくして、ハルはアイロンの縄を解いた。
 アイロン「これは・・・?」
 ハル「一度だけです。次は、見逃しません。」
 アイロンはハルの目をまっすぐに見た。
 アイロン「ありがとうございます。」
 ハル「あなたの行為を認めるわけではありません!ですが…」
 アイロン「何も言わなくていいのです。何も…」
 ソックスアイロンは窓を開け、飛び降りていった。
 「ソックスハンターが逃亡した模様!」
 「総員第一種警戒態勢!」
 突然、だんだんと叩かれるドア。勢いよく開かれる。飛び込んでくる綸子と阪。
 綸子「ソックスハンターが逃げたって知らせが!ハルちゃん、大丈夫?!」
 ハルは阪を見るなり抱きついた。
 阪「どうしたの?ひどい事されたの?」
 ハル「分からない、わからないのっ!」
 そのまま、泣き崩れるハル。
 その足からはソックスが消えていた…

結果

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