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kabane

かばねっち(ACE)

 「彼女… いやせめて彼女(彼?)で…」
 「えー」
 「またそのパターンか!」
 ──イグドラシル選定の風景

  淡い茶の髪の美しい人。彼女の名を只野枝かばねという。
  黙っていれば美少女で通るが、れっきとした少年である。
 
 「ちょっとぉ、なによそれぇ?」
 
  …れっきとしたコギャル少年である。
 
  只野枝かばね。通称かばっちはウミネコハイツの住人である。
  実は彼女は天涯孤独の身で、幼いときからハイツで一人で暮している。
 しかし、一人というのは誤謬かもしれない。ハイツには一癖も二癖もある住人達が住んでいたからだ。
  
  そんな住人に囲まれて育ってきたからかどうかは知らないが、なぜか彼女の性格はコギャルそのものである。
 (コギャルとはまた古いが)口調は語尾をのばすあの喋り方、よく人を〜っちとあだ名で呼んだり。
 その行動にいたっても女の子より女の子らしい時もあったりなかったり。
 
  ギャグ要員ではあるが、他人をからかうことにつけてはその才能を存分に発揮し、将来の大悪女を周囲に予感させる。彼女の満面の笑みに青くなる者も少なくない。
 
  そんな彼女の物語。
  その始まりは、ウミネコハイツに新たな住人がやってくる、そんないつも通りの真夏の日であった。
 
  新たな住人の名はかれんちゃん。実は、絶対機密のアンドロイドである。
  かれんちゃんと仲良くしようとしたかばねは、ところがそのかれんちゃんに記憶を消されてしまう。
  なんとかかばねは記憶を取り戻すが、それと同時にかれんちゃんの秘密を知り、これをきっかけにかれんちゃんの真相に迫っていくことになるのだった。
 
 「…なんでかばっちの記憶消したのかな」
 
  ゆっくりと、しかし確実に真相へ近づくかばねだが、かれんちゃんを巡る運命は複雑に絡み合っていた。
  ハイツ住人にしてセプテントリオン幹部である丁字倖也。
 かれんを利用しようとしていた同じくセプ幹部である彼の父より只野枝かばねの抹殺命令が下る。
 倖也の実母に似ている、という理由だった。
 
  運命の日。この日に全ては決まり、未来は最悪の方向へと動き出す、はずであった。
  しかしながら、次元接続リングの奇跡により、今が変わる。
  すべてのギャグキャラたちが集結、かばねを守るため、倖也の目を醒まさせるために彼の前に立ちふさがった!
 
  が、あっさり負けていった。
  なんだかもう馬鹿馬鹿しくなった倖也はかばねにこう言うのだった。
 
 「僕の母さんに、なってください」
 
  もちろん、倖也は星となって夜空へ消えていった…。
 
  只野枝かばね。15で男にして年上からかあさんと呼んでいいですかと言われる。
  これだけで十分ただ者ではないが、それで終わらないのが彼女の彼女たる所以なのだろう。
 
  彼女はその後、丁字倖也を名誉息子とした。
  母さんっていっても本当の母って意味じゃ…とか倖也はごねたが、彼女には勝てなかった。さすが将来の大悪女である。
 
  数年後。かばねはご近所の万能アイドル。だけども明るく笑うその顔には不意に寂しさが宿る。
  息子が消えたからだった。丁字倖也は重大な決意とともにウミネコハイツから姿を消していた。
 
  そんな彼女が心のそこから微笑むその日は…、意外とはやくに来ることになる。
  
 「どこにいってたの、放蕩息子。」

イラスト:涼原秋春 解説:阪明日見

要点への挑戦

 かばねっちの要点は「サンマ,箸,空中回転」という不可解なものでした。
 上記イラスト&解説で要点、周辺環境共に満たされておりますが、
 アイドレス製作初期には要点を満たすために非常に苦心しておりました。
 akiharu国流の努力の痕跡をご覧下さい。
 「君ら馬鹿だろう。いい意味で」(藩王コメント)

ギャグキャラ風登場による空中回転(作:忌闇装介)

新たなる神話 〜秋刀魚の女神様〜 (作:東西 天狐)

 あのお方こそは秋刀魚の女神様じゃ
 −とある漁村の漁師の呟き−
 
 にゃんにゃん共和国南国地帯の地図にも載っていないとある漁村でちょっとした事件が起こっていた。
 ある日から沖合いの海に青い巨人が現れ、突然秋刀魚が空から降って来るようになったのである。
 村人たちは理由は分からなくとも、これは海の恵みだ、いや天の恵みだと言っては大喜びで秋刀魚を食べ、売り、大いに感謝した。
 しかしながら物事とはそうそううまく運ばないものである。
 三日経っても秋刀魚は降り続いた。
 一週間経っても秋刀魚は降り続けた。
 一ヶ月が経つころには貯蔵庫からは秋刀魚の干物と冷凍が溢れ、浜と港は秋刀魚の屍骸で埋まった。
 村人はこの頃になると、これは海の祟りだ、いや天の怒りだといいながら秋刀魚の山を前に途方に暮れ、巨人が沖に現れると家に隠れて震えて過ごすようになった。
 そして。
 ついに村の会議で海と天、双方に村の娘を生贄にささげることで怒りを静めてもらおうという結論に至った。
 
 ちなみに生贄の風習はわれわれの世界でもごく最近まで普通に行われているものである(日本でも治水工事や神事にかかわる建物には普通に人身御供が行われている)。
 
 その夜は暗い空に冴え冴えと満月が浮かぶ、好い夜であった。
 村の中心部の広場では木で巨大な祭壇が組み上げられ、秋刀魚の香り漂う中、生贄として定められた娘たちがあちらこちらで家族と別れを済ませる姿が見られた。
 耐え切れずすすり泣く者、気丈に振舞って笑って見せているもの、あるいは逃げ出そうとして周りの人間に取り押さえられる者。
 皆様々ではあったが刻一刻と刻限は迫っていた。
 そして、月が天頂に達し篝火が一層激しく燃え盛るころ。
 ついに娘たちが祭壇へと進み、上り始めた。
 
 一方其の頃。
 村の入り口では地図を片手にした見目麗しい人物が村の若者と問答していた。
 若者の名前をアウルと言った。
 今宵は大切な儀式があるゆえ村には入れぬというアウルに、道を教えてほしいだけだという麗人。
 アウルは地図が読めないために案内のためにはほかの人間を呼ぶ必要があったのだが、
 あいにくともう一人の見張りは見回りに出てしまっていた。
 麗人は少し考えた後に何かのお祭りですか、と尋ねた。
 そしてアウルが俯いて海の怒りを鎮める為に娘を生贄に捧げる儀式だ、と答えた瞬間、すさまじいまでの威圧を放った。
 へたり込むアウルに詰め寄りそれはどこで行われているのか、と笑みを浮かべて迫ると
 若者は震えながら村の中心の広場です、と素直に答えさせられた。
 そうして、脇を行こうとする麗人を思わず呼び止めると、裏道があるので案内させてほしいと願い出た。
 首をかしげる麗人にアウルは叫んだ。
 生贄の中に婚約者がいるのです、と。
 それで麗人は納得したように頷いた。
 なるほど、だからあなたは傷だらけなのですね、と。
 
 祭壇に上がった娘たちは皆一様に諦めの表情を浮かべていた。
 彼女たちの家族、友人、あるいは恋人たちは悲しみ、同情し、精一杯励ましてくれた。
 中でもアウルの婚約者である娘、名をレイラという、はとりわけ幼く村の誰もが悲しんだ。
 村一番の漁師アウルとの婚約が決まったとき、幸せに輝いていた笑顔は暗く、沈んでいた。
 アウルが自分のために長老たちに逆らいひどい目に合わされたとは噂で聞いた。
 それ以来アウルとは会えておらず、安否すら確かめられなかった。
 その心中は目前に迫る自身の命運よりもただ婚約者の無事を祈るばかりであった。
 
 だから、祭壇の裏手から駆け寄ってくる其の姿を認めたときには思わず名前を呼んでしまった。
 
 村人に取り囲まれた祭壇の上で麗人は困ってしまった。
 生贄の娘が若者の名を呼んだことでこっそり逃がす算段が崩れてしまったのだ。
 しかしながら、娘を抱きしめ今にも村人を蹴散らしそうな若者を見ていると間違ったことはしていない、と確信した。
 されど状況は絶体絶命、どうしたものかと思って空を見上げるとぶぉぉぉぉぉぉん、と遠くに音が聞こえ、
 月の中にいくつもの黒点が見えた。
 そこで腹を決めた。
 
 控えなさい、私は海の使いである。
 このたびのあなた方の贈り物を贈る気持ちはありがたくいただきましょう。
 しかしながら私たちは彼女たちを受け取ることはできません。
 海の底では彼女たちは暮らせないのです。
 それでもなお私たちが必要ないものを押し付けると言うのならば更なる災厄がこの村を襲います、それっ
 
 村人が圧された次の瞬間、空から大量の秋刀魚が降りそそいだ。
 今までにないその勢いに村人たちは悲鳴を上げて逃げ惑い、ある者はその場にへたり込んで祈りを捧げ大混乱となった。
 しばらくして、ようやく秋刀魚の雨がやむと村人たちは口々に女神様じゃ、秋刀魚の女神様じゃと口々にしながら平伏した。
 
 後三日お待ちなさい、さすれば秋刀魚は止むでしょう。
 その間、くれぐれも彼女たちを丁重に扱うのです。
 
 頭に秋刀魚を乗せた麗人もとい秋刀魚の女神様はそう言うとアウルとレイラを連れて村を離れた。
 
 かくして三日後。
 秋刀魚の雨は止んだ。
 其の日、村人たちの食卓から久方ぶりに秋刀魚が消えた。
 そして村人たちは秋刀魚の女神様バンザイ、と言って村に帰ってきたアウルとレイラの結婚式を盛大に執り行った。
 めでたし、めでたし。
 
 はもう少し後。
 
 
 一方akiharu国では、藩王涼原秋春以下国の首脳部が国を訪れた人物からものすごくおこられていた。
 そして件の村から大量の秋刀魚を買い上げることとなった。
 降り注ぐ秋刀魚の雨の正体はターキッシュバンが演習中に吹っ飛ばしてしまっていた秋刀魚だったのである。
 後に其の様子を見ていたとある猫はこう語った。
 サーラ先生より怖い女の人が来たと思った、と。
 
 買い上げた豊富な魚介類は人の手や工場を経て国民の食卓へと届けられることとなった。
 とりわけ量の多かった秋刀魚はウミネコハイツakiharu国分荘において行われた
 歓迎会をかねた秋刀魚祭りとして盛大に消費された。
 祭りの後半には主賓もエプロン姿となり、さいばしとお玉を両手に腕を振るい、大いに楽しんだ。
 
 秋刀魚の香りとともにakiharu国を訪れた新しい民。
 只野枝かばね。
 それが「彼」の名である。

要点・周辺環境

要点

周辺環境