豊かな動植物を誇るakiharu国では自然が織り成す美しい光景や
野性的な動物達が観光としては見所である。
しかし、一番人気となっているのが
「ジャングル食べ歩きツアー〜食べられても知りません。大自然の掟編〜」である。
まず、ツアーの初めに必ず傷害保険に加入させられる。これは強制事項である。
また、免責事項を読むと
当観光協会のガイドは最大限お客様の身をお守りしますが、
必ずしもお客様の安全を保証するものではありません。
と書いてある。
ツアー内容は半日<極楽コース>・1日<涅槃コース>・三日<覚醒コース>・一週間<天空コース>に分かれている。
壁には生還率<極楽=99%><涅槃=85%><覚醒=70%><天空=25%>と
「無事故達成日数100日」「安全第一」と書かれた標語が貼ってある。
観光案内所には、なぜか病院が隣接しており、小さいながらも救急医療施設24時間対応である。
受付のお姉さんがニコニコしながら言う。
「当病院は高い医療技術をにゃんにゃん共和国から認定されています。
なので、
ちょっとぐらい怪我をしても大丈夫。
だいぶ怪我をしても大丈夫。死にはしません。
もっと怪我をしたらあきらめてください」
不穏な空気が漂う。
試しに半日コースの内容を見てみよう。
ツアー客はガイドのお姉さんからまず強化プロテクターを手渡される。
「プロテクターの付け方が分らない人は僕に聞いてね!」
という事で初心者でも安心である。
強化プロテクターを付け終ると密林へ出発である。
最初、ツアー客は物珍しそうにきょろきょろと密林を見て回るが、ふとした瞬間蔓が客に襲い掛かる。
ガイドがすかさず客を退避、もう一人のガイドが蔓を叩ききる。
このような事が10分に一回起こるので、
どんな客も最初の30分も経つと上下左右を警戒しながらじりじりと密林を進む事になる。
ちなみにこの蔓を持って帰ると、
目があっという間にぐるぐるになる薬を吏族達が調合してくれるのでお土産として珍重されている。
一時間ばかり経つと最初の目的地である。
澄んだ川の傍に半径3m程の巨大で艶やかな花が存在する。
中央部には1m程の蜜の入った壷が有る。
ツアー客達は川辺で汚れを落とした後、ガイドに言われるまま、その蜜壷の中に飛び込む。
「この花は肉食でして、獲物をおびき出すために出す蜜、こいつが甘くてうまいんですよ。
でも外気に触れてしまうとぱらぱらになってしまうんで蜜壷の中に入らないと駄目なんです」
「ああ、ほんとだ。とろけそうな甘さと、ほのかな花のいい香り。
……それで、僕たちは捕まったこの状況から、どうやって脱出すればいいんでしょ?」
「気合で」
まさに食うか食われるかの食べ歩きである。
このほかに迫り来るバナナから必死に逃げながらワニを食べるニワナナバ湖等を巡り川を下って半日ツアーは終了となる。
最終到着地である船着場では土産物屋の屋台が所狭しと並んでいる。
ツアー中にいつの間にか撮られた蔓に巻かれて逆さになっていたり、バナナに食われそうになっている写真。
akiharu国特産の干し怪鳥・沼の主カレー(レトルト)・ピラニア缶。
芳醇にしてまろやか、コクがあってしつこくない、フルーティーな香りと極上の肉質なワニの肉を使った元祖ワニ饅頭。
口の中に入れた瞬間断末魔の叫びがあがるバナナ。
等などが売られている。
中にはキノコや蔓から抽出した藩王様ご愛用の薬などを横流ししている熱帯屋という怪しげな屋台も有る。
そんな怪しげな屋台の中で、この所飛ぶように売れているのが
ちょこまかと働く愛らしい吏族をデフォルメしたマスコット人形である。
「この国には親父と眼鏡と筋肉しかいない!」と嘆いた王立商品開発部によって作られたakiharu国の萌え商品第一弾である。
ツアー客達はこんな危ないツアーは一度で十分だと思い、こりごりして国に帰るのだが、
1ヶ月位経つととろけるような甘さの花蜜やぷりぷりとしたワニの背脂の味を思い出し
知らず知らずの内に反芻するようになる。
そうしてまた3ヶ月もするとakiharu国に来て食べ歩きツアーに参加してしまうのだ。