通常なら、RBパイロットはごく一部の例外を除いて、
サイボーグ手術を行うことで反応速度を向上させる。
そうしなければ、未来予知すらも駆使するRB戦闘に、普通の人間では耐えられないのだ。
しかし、優れた肉体を持ち、それを実戦の中で鍛え上げてきたakiharu国人にとっては、
生まれ持った肉体を捨て去ることは論外であった。
そこでakiharu国が目をつけたのは、かつてこの国の多くの吏族の先祖である
まじない師たちがつかっていたある薬物である。
自然のキノコから抽出されるこの薬物は、
現在の医学でより強力に精製され、一時的とはいえ感覚能力を大幅に向上させ、
RBパイロットに必須である未来予知すらもたらすのだ。
彼らパイロットによって操られるakiharu国のRBは、
獣のように俊敏で獰猛な動きをすると恐れられている。
可能な限り毒性を除去したこの薬物だが、パイロットの体を蝕むことには変わりない。
しかし、鍛えられた肉体を持つakiharu国人は、
高い医療技術のバックアップと合わさって、毒物の害を克服することに成功した。
もちろん、いくらか健康も害するし、時々夢見がちにもなって目つきが剣呑になるが、
他国のドラッガーと比較すると、驚くほど健康的である。暗いところが好きになったりもしない。
薬物は、専用の容器を首筋に突き刺すことで使用する即効型である。
露出することが好まれる手足に突き刺すのは一般的ではなく、
パイロットの証である白いマフラーは、薬物の傷跡を隠すためにも使われている。
パイロットの勤務する飛行場は、森林の中にひっそりと存在しているものの、
先ほどの未確認の敵との戦いによる予算不足からひどく痛み、半ば廃墟と化している。
建物によってはツル植物に覆われ、窓は板で打ち付けられている有様だ。
(先ほどの戦いでは、予算が底をついては涼原秋春藩王が出稼ぎしてきて、出撃するの繰り返しであり、
飛行場の修復に回す費用がなかった)
今なら再建も可能だが「こんなボロ飛行場がまだ稼働するとは思うまい」という藩王の判断で、
これまでの飛行場の地下に、第二飛行場が作られ、いざというときにはそこから出撃を行う。
薬物を体に打ち込むことによって、感覚能力を大幅に向上させるドラッカーパイロット。
この特殊な精神状態でRBに乗り空を駆るとき、ある種の特徴的な体験をした者たちが現れた。
彼らが言うには、自分がRBを操縦しているのを上空から見下ろしていた、のだそうだ。
集められた体験談をもとに、医師たちは研究に研究をかさね、ついに意図的にそのような変化を引き起こす薬物を生成するのに成功した。
この薬を使ったとき、パイロットはあたかも神の視点によって戦場の大部分を見渡すことができるようになるだろう。