ヒーローショー。地下仮設ステージにて。
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ここはakiharu国。
通常なら数分で死ぬ、汚染された大地の中、
密林を切り開き、森の奥を目指して突き進む人影があった。
……いや、人影の中の一つが倒れた。
「大丈夫か!?」
「……俺のことはいい、先に進んでくれ」
「だが……」
「レディのことを忘れるな! ……あんな偉大なカマキリが、誰にも食べられることなく、
一人で眠っている。俺たちが食べないで、誰が新しい命へと繋げていくんだ!
それが、鍋っ子の心意気ってもんだろ?」
そう、彼らは鍋の国の民。
恩義があるレディを食葬し、弔おうと命をかけてやってきていたのだ!
そして、涙をぬぐいながら、鍋っ子たちは先へ進もうとした。
だが、そのとき!
「待てい!」
「だ、誰だ!」
「この姿を見忘れたか、とうっ!」
どこからともなく舞い降りるその姿、ああ、それこそが!
「変身ヒーロー、参上! ハッハッハッハッハ」
「ゲーッ、ヒーロー!」
「鍋っ子たち、君たちをここから先へは進ませないぞ!」
「待て! 俺たちはレディを弔おうとしているだけだ、なぜakiharu国人のお前が邪魔をする!」
「それはだな……ゲホッゴホッ!」
「ゲホ、ゴホ……! くっ、土の毒か!」
「よい子のみんながまねをするといけない! 安全な地中で話さないか!」
「ああ、よい子のみんなのためならしょうがない! いこう!」
後編へ続く!
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さあみんな、後編のはじまりだ!
ここはakiharu国の地下。
ヒーローと鍋っ子たちは、鍋を囲みながら命について話し合っていた。
「食べることは命をつなげること……!」
鍋の中の肉を箸でつかみながら、鍋っ子は言った。
「愛する者を食べて、食べられて、命をつなげることで、俺たちは力を受けつぎ、
永遠に生きることができる。
……俺たちは、レディを食べて、明日を一緒にいきたいだけなんだ。
レディを一人で眠らせたくないんだ。……同じ南国人のお前ならわかるだろ?」
ヒーローは答えた。
「ああ、お前たちの言っていることはわかる。
……だが、弔うってことは、それだけではない!」
「なんだって!」
ヒーローの力強い瞳が、鍋っ子たちを見つめた。
「レディは死んだ。だけど、一人で眠ってなんかいないさ!
その心は、NWのみんなの中で生き続けている!
NWのみんなはレディのことを覚えていて、
レディの心を受け継いで、そうやって一緒に生きていくんだ!
……レディのお墓にお参りする人を見ればわかるだろ。」
「くっ……」
「みんな、レディのことが好きなんだよ……。
そしてな、NWのみんなにとっては、レディが眠るお墓こそが、レディを弔う象徴なんだ。
お前たちがレディを食べて、お墓がなくなっちゃったら、みんなの中からレディが薄れていってしまう。
レディだって、食べられもしたかっただろうけど、それよりNWのみんなで一緒に生きたいって思ってたはずなんだ!」
「ヒーロー……!」
鍋っ子とヒーローが見つめ合う。
「……ヒーロー、俺たちは、間違っていたのか……?」
「間違ってなんかいないさ! ……だけど、僕たちには、友情はあっても違いはあるんだ。
共に和し、レディを愛する仲間として、みんなで力を合わせて、もっといいNWにしていこうぜ!」
「おう!」
重なり合う手と手。
幕。
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ヒーローショー後の、ヒーローから観客への呼びかけ。
「みんな、説明したように、鍋の国の人たちが、レディの遺体を食べに来ている。
彼らの気持ちもわかる。だけど、NWのみんなとレディのことを考えると、食べられるわけにはいかない!
みんな、鍋の国の人たちを説得して止めるんだ!」
認可:藩王 涼原秋春
脚本:摂政 444