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seitokai

南国人+医師+風紀委員会+生徒会役員

イラスト

作:和志

設定文

設定解説SS 作:鴨瀬高次

 燦々と降り注ぐ太陽、鬱蒼と茂る密林、響きわたる得体の知れない何かの鳴き声。
 そんな未開の地の奥に、小さな国があった。
 国民の4割は人間と怪物の境界線、それと同じくらいの盗掘者、残りは風紀委員会。
 ここはakiharu国、常夏の楽園。
 第一話 
 
 -学長室-
 朝だというのに部屋は薄暗かった。窓から入る唯一の朝日は逆光となり、学長の姿をさらに不気味な者にしていた。
 風格はすでにギャングのボスよね。
 学長の机と同じくらいの身長しかない女性は空想上の学長に帽子や葉巻をくわえさせ、思わず吹き出しそうになった。
 「どうも朝早くからすいません、授業もあるでしょうに」
 その風体とは裏腹にえらく腰の低い学長だった。猛烈に嫌な予感がする。
 「一般生徒からの要望もありまして今度生徒会を作ります。そこであなたにはその中心的役割を担ってもらおうかと思いまして」
 何気ない口調。生徒会というのは何だ?
 「なぜ、私なのでしょうか?」
 「阪さんは吏族の先生であり、医学生であり、そして風紀委員でいらっしゃる」
  なぜ立場が複雑な者を呼ぶ?あまりにも危なすぎる。
  この学校はサーラ?サーシャ氏の来国?また吏族制度が免許制になったのを受け、医療政治学校として成立した。
  阪はその吏族歴を見込まれ、教員となった。また、医学を志すものとして学生でもある。
 その後、参謀?法官?護民官?考古学等も教えるようになり、現在の秋春統合学校が建学された。
 国民が少ない割に教育内容が多い為、一校で何でもやろうと考えたのである。
 であるから、ある教科では先生役だが、他教科では学生に回ると言うことが珍しくない。
 そして学校の成立と共にある一つの組織が阪を中心に立ち上げられた。
 風紀委員会である。
 akiharu国では建国当初からソックスハンターが暗躍していた。
 当然学校が建学された時もその活動が予期された。人集まる所にハンターあり、である。
 その証拠に秋春統合学校生徒心得服装規定ロには’ソックスは白色三つ折りにすべし’と
 書いてある。これも裏からソックスハンターの圧力がかかったからだと言われる。
 もっとも、南国akiharu国ではサンダルが主流であり、この服装規定を守る生徒はあまりいない。
 ともあれ風紀委員会は学校の風紀を守るため己が職務に熱心であると言える。
 学校の発展と共に、暗躍する組織の数も増え、現在では大きく6機関存在する。
 ソックスをこよなく愛するソックスハンター
 藩国から藩国へ流浪の旅を続ける美女が創立者と目される美少年ハンター協会
 すべてのPCに眼鏡をかけさせようとする神聖眼鏡同盟
 気づくと常にもぐもぐしているもぐもぐ神を祭るもぐもぐ教。女性が気づかず入会している事が多い。
 アイドレスに存在するPCを熱烈に崇拝する○○ファンクラブ。百家争鳴である。
 荒田家を見守る会。ほのぼのとしたBアラダの日常を淡々とつづるお話をこよなく愛する会である。
 表向きは手芸部・写真部・美術部・家庭科部・現代風俗研究会・芸術部・帰宅部等に身をやつしている
 これらの組織が体育会系にむしりとられた後の予算と人員を奪い合い、秘密裏に同盟?密約?裏切り等を繰り返し、
 複雑に絡み合っているのが秋春統合学校の裏社会である。
 
 「ええ、だからです。なぜわざわざ、3つの立場を持つ私なのでしょうか?」
 学長は阪から目をそらすように窓の方を向いた。
 窓から見下ろす校庭には焼け焦げた後となぜか5mほどのクレーターが残っていた。
 「風紀委員は風紀維持のためによくやっていると言えるでしょう。ここ最近では一般生徒の規律も良くなりつつあります」
 「はい、皆に風紀が行き渡っていると思います」
 「しかし、それ以上に!周りに対する被害が大きすぎる! 
 いいですか、この学校の発電設備は隣接する病院のバックアップも兼ねているのでakiharu国をまるまる一つ、まかなえるほどです。
 しかし! その発電設備がなぜか、突然ブレイクダウンしたのです、風紀委員会の活動中に3回も!」
 思い当たる節がありすぎた。
 「なぜでしょうかね」
 自分の言葉が適切な間だったかと考える。
 「・・・調べはついています。風紀委員の中で一部の過激な者が存在していると。風紀委員会は風紀を守るために存在している、
 それ以上でもそれ以下でもない、必要な事を成すだけだと! まあ、言うのでしょう!」
 学長は自分を落ち着かせるかのように一つ咳払いをする。
 「一般生徒の間には厭戦気分が蔓延しています。学校側としても何らかの対処をしなければなりません。
 そこで新たに生徒会を立ち上げます。主たる任務は学園の平和の維持です」
 「しかし、一般生徒から選出させる訳には行きません。奴らはどこからでも入り込んでくる。
 一人一人は小さな蟻でも集団ならダムを決壊させかねません」
 「わかっています。主たるメンバーは風紀委員会から選ばせます。うまくやりなさい」
 要するに邪魔になったという事か。しかし、排除するには余りに大きすぎる。
 学校側にその力はない。首輪を付けて飼い慣らそうと。
 「承知しました、学長 しかし一つ条件が」
 「あなたは条件を付けられる立場ではない」
 「では、お願いです。風紀委員会はそのままに」
 学長が鋭い眼光で阪をにらむ。
 「まあいいでしょう」
 「ありがとうございます」
 「以上です。今日も授業をお願いします」
 
 「…完璧です。6機関を代表し御礼を」
 阪が去った後には男が立っていた。眼鏡が光り、表情が見えない。
 「かれんちゃんは無事ですか?」
 「ええ、彼女にも生徒会に入ってもらいます」
 「何を考えているかは知りませんが、平和にお願いしますよ」
 「6機関とて、好んで争いを起こしているわけではありません」
 第二話 
 
 -中庭-
 亜熱帯性の気候がもたらす気温と湿度の高さからは、akiharu国のどこにいても逃げられない、お国柄のようなものである。
 その蒸し暑いakiharu国で、学校の中庭は比較的木影が多く、暑さをしのいでいる猫士や、学生達でにぎわっていた。
 その学生達に混じり、木陰で寝転がる女性が一人難しげな顔をしていた。
 おへそが見えるほど短い上着に、医学生の証である白衣をまとっている。
 やはり涼しげなミニスカートからは健康的な白い足がすらりと伸びて美しい。
 ともに、学校指定の学生服である。
 頭には誰かの悪戯か、黒ぶち眼鏡がのせられていた。
 「うーん、やはり新規に設立する生徒会は風紀委員会と既存敵対組織との板挟みになりそうね」
 阪は先ほどまでの会議を思い出していた。
 
 阪から生徒会成立の知らせを聞いた風紀委員会達にどよめきが走る。
 「活動が制限されるのですか?!」
 「あの蛮族どもを我々以外誰が押さえられるというのです!」
 「静粛に!静粛に!」
 議場は混乱し、事態の収拾には10分以上がかかった。
 落ち着いた所で阪は再び切り出した。
 「もちろん、風紀委員会にはこれまで通り、いえ、これまで以上の活動をしてもらいます」
 「先程の話ではそうは聞こえませんでしたが!」
 叱責のする方をちらりと見やる。そう言えばこの間、もぐもぐ教との戦いで笑いながら家庭科室を火の海にした人だったな。
 「しかし、一般生徒や、教職員への情報操作も問題視されていました。新たに設立される生徒会はこれを主な任務とするでしょう」
 「現場での指揮権はどちらが優先されるのですか?」
 「生徒会です。しかし、即応制と言う意味では風紀委員会の方が遙かに行動が早い。この意味が分かりますね?」
 うなるような声が議場を包み込む。ようするにこれまで以上に戦闘を早く終え、見つかる前に撤収しろ、という話である。
 その為によりいっそうの戦力強化を図ると。
 「これはすでに決定事項です。我々はすでに決められた枠組みの中でもがくしかないのです」
 
 生徒会が陥るであろう状況を想像し頭を抱える。
 悪い考えを振り払うように頭をふり気分転換をする。
 ふと、隅を見やると田中が本を読んでいた。視線に気づいたのか、軽く会釈をされる。
 「ちょうどネットでおもしろい本を見つけまして。生徒会長は二度死ぬっていう本なんですが」
 うわ、そう言えば生徒会長どうしよう。あからさまに生徒会長って板挟みだし。どっかの馬鹿が生徒会長暗殺とか本気で考えそうよね、この学校。
 「それまで何の変哲もない普通の女子生徒だった主人公が生徒会の扉を開けようとして次期生徒会長とぶつかって...」
 うーん、私...は長っていうのはちょっとだし。
 「それで、タイトル通り死亡フラグが300回くらい立つんですが…」
 綸子さんもー死んじゃったら困るし...
 「で、その狸顔が織りなすギャグタッチで困難を切り抜けていくという...」
 ギャグ、ギャグ...ああ!そうよ。ギャグキャラなら何度でもしねるじゃない!
 我に返った阪が突然田中の手を握る。これって恋?
 「田中さん、ありがとう!おかげで悩みが解決しました!じゃ、用事があるんでこれで!」
 嵐のように去っていった阪。
 呆気にとられながら見ていた田中は手を握られた格好のままだった。
 「結局、生贄だったんですけどね…」
 
 -王宮外苑-
 風が草原にさざ波を立てていた。
 そんな中、南国人にしてはたくましい体格を持つ男が難しい顔をしていた。
 ついに、スパイ生活がバレたか?いや、しっぽを捕まれたような兆候は無かったはず。
 東西天狐、またの名をソックスゾルゲ。普段は風紀委員会の衣装を身にまとっているが、
 その実体は狐面に褌という個性的和風ハンターであった。ソックスハンターに変態多しと言えどもまたに名を持つのは彼だけである。
 天狐は阪からの急な呼び出しに戸惑いを隠せなかった。
 「ごめんなさい遅れて」
 息を切らせて走ってきた阪。ほのかに頬が赤い。
 「他の人がいると、いろいろまずいから、」
 呼吸を整えるため、切れ切れに喋る阪。
 他人がいるとまずい、つまり俺はここで処理されるのか?
 確かにここなら悲鳴を上げても獣達の声に紛れて聞こえないだろう。
 死体は肉食植物の中に放り込んでおけば3時間後にはどろどろに溶けてる。
 風紀委員会には人知れず死体を処理する者がいると聞いているが、まさか本当だとは!
 緊張に身構える天狐。
 「いたっ!」
 不意によろめく阪。
 「ど、どうしたんですか?」
 「来る途中で足をくじいてしまったみたいです」
 「肩貸しましょうか?」
 「ええ、ごめんなさい」
 首に手をかける阪。肩を貸そうとかがむ天狐。屈んだまま動きが止まる。
 「どうかしましたか?」
 「いや、このまま立ち上がると阪さんの足が地に付かないのじゃないかと思って、そうだ」
 「きゃっ、ちょっと、なにをっ?!」
 「こうすれば、大丈夫ですよ」
 そう言って天狐は阪を肩車した。
 「うわ、世界が小さく見える、じゃなくて!」
 何でこんな事急にするのって言うか変態じゃないの変態?!顔を赤らめて、足をジタバタさせる阪。
 「阪さん、あんまり暴れるとその…足がっ」
 「っ!」
 急におとなしくなってスカートのすそをひっぱる阪。大きく深呼吸をする。
 「大事な話があります」
 ぐっ、ついに来たか。
 先手必勝、後手必敗、やったもん勝ちとばかりに自らの股ぐらに手をつっこむ天狐。
 「生徒会長になってもらえませんか?」
 一瞬の空白。
 驚きのあまり別の物を握ってしまう。瞬間体に激痛が走る。
 「ぐおおおおお!」
 「ど、どうしたんですか?」
 「いや、ちょっと驚きまして、ははは」
 「変わった驚き方をするんですね」
 ギャグキャラはやっぱり反応が違うわ、と思う阪。
 「で、でも俺なんかに勤まるか……」
 「大丈夫、天狐さんなら絶対に勤まります、私が見込んだ人ですから」
 先ほどまで暴れていた白く細い足が天狐の首筋にふっと触れる。
 「天狐さんは、引き受けてくれますよね?」
 「ええっと……」
 なんだかやわらかい物体がははは、なんか熱いなあ、南国だからかなぁ、あれだんだんと苦しくなって、息が出来なく……
 「ね?」
 やっぱり罠だった、というかね? って言われてもこう、首を絞められては何も返事が出来ないしうなずけもできないし、
 だんだん目の前が白くなってきた、死んだはずの鴨瀬さんがなにやら手招きしている……?
 「天狐さん、YESなら右足を一歩前に出してください」
 朦朧とした意識の中、言われた通りふらふらと右足を一歩踏み出す。とたんに苦しさから開放される。頭に一気に血が登りくらくらする。空気っておいしい。
 「引き受けてもらえると思ってました」
 満面の笑みを浮かべる阪。
 「……阪さん、確信犯ですか?」
 「何言ってるんですか?悩殺ですよ、きっと」
 悩殺……悩んだら殺されるって意味だろうな。
 「さ、学長に生徒会長の就任を伝えますよ、GO!GO!」
 ばしばしと足で背中を叩く阪。
 「うへ、わかりましたー」
 まあ、しょうがないか。
 天を仰げば雲一つなく、風達がまとわり付くように涼しさを運んでくる。
 天狐は阪を肩車したまま学長室へと向かった。
 
 だまされた。
 要するに生徒会長というのは中間管理職みたいなものだ……
 冷や汗をかきかき学長の前で報告しながらそう思う天狐であった。
 第三話
 
 -学内 生徒会室-
 真新しい生徒会室は新築の匂いがした。
 「生徒会っつっても風紀委員会とそんなに変わんないですね」
 使っていない机やら椅子を運んでいる天狐。
 「そんな事ないですよ」
 パイプ椅子に座り、うっとりしながら長い剣をかざす阪。
 「これまでは竹刀とかいうつまんないもん使ってたから仕方なく、爆発物やメス投げと併用してちまちま戦ってきたけど、これからは真剣が使えるから悪・即・斬♪」
 ダンボールから書類を出して整理するかれんちゃん。
 「あの……悪い人の中にもいい人がいると思うのですが……」
 「私もそう思って、説得していた時期があったわ……」
  剣を鞘に収め、かれんちゃんの肩に手をかける阪。
 「でも、akiharu国には二つの種類の人間、つまり変態かドラッカーしかいないの」
 「そうなんですか……」
 「あ、阪さん、剣が長すぎて床に引きずってますよ?」
 妙な汗をかいている天狐が話題を変える。
 「それなら、この間和志さんが」
 阪が鞘を持ち上げると先には車輪が付いていた。
 
 「阪さん、どうしたっすか?」
 和志が剣を握って難しい顔をしている阪を覗き込む。
 「生徒会用に新しく剣を貰ったんですが、その剣がちょっと長すぎて……」
 阪が剣を差して歩いて見せると、鞘の先がずりずりと地面を引きずる。
 「それは剣が長いんじゃなくって、阪さんがちいさ…」
 「何か言ったかしら?」
 「いや、ええっと……そう、そんな時はあれっす!」
 和志がちょっと、阪の前からいなくなったかと思うとすぐ帰ってきた。手には何かを握っている。
 「車輪?」
 阪が首をかしげる。
 「これをこうして鞘の先に付ければ、ほら、引きずっても大丈夫っす! 歩いてみるっす!」
 不安げに阪が一歩、二歩と歩いてみると、きゅらきゅらと音を立てながら剣が地面をすべる。
 「うーんこれで何とかなるかしら?」
 「あ、こんな所にいた。お薬の時間ですよー」
 綸子が病院からやってきたのか、白衣を身にまとって和志を呼んでいた。
 「はっ、そうだったっす!じゃあちょっと行ってくるっす、カマキリライダーが僕を呼んでいる!」
 
 「という事があったんですよ」
 剣を差しながら自慢げに歩いてみせる阪。
 「よかったですね」
 にっこりと笑ってみせるかれんちゃん。
 うわ、天然ボケだ。思わず突っ込みたくなる天狐。でも、突っ込むと殺されるから止めておこう。
 「あ、そうそう、あとこれ。」
 がさごそとダンボールを漁り腕章を手渡す阪。
 「ちゃんと生徒会って書いてあるでしょう?しかも裏を返すと応急処置セットが収納されてるの」
 阪が腕章をひっくり返してみせると、3重構造になっており、
 包帯やテーピングバンド、消毒薬やモルヒネのアンプル、さらにはコッヘ、長鉗子、メス、縫合針などがぎっしりと詰まっていた。
 「だから、かれんちゃん。間違っていい人をふっとばしても大丈夫」
 「あ、そうですね 間違ってたら治して謝まればいいんですね」
 天使のようなほほえみを浮かべうなずくかれんちゃん。
 もう何も言うまいと思う天狐。
 突然、生徒会の扉が大きな音を立てて乱暴に開いた。
 何事かと3人が振り向くと、白衣を着た綸子が顔面蒼白で息を切らして立っている。
 「大変です! 新薬の実験中に被験者が暴れ出して!」
 すぐに阪と天狐が病院ブロックへ飛び出す。遅れてかれんちゃんがあたふたと二人の後をついていく。
 「状況はどうなってるの?」
 走りながら阪が綸子に尋ねる。
 「投薬実験中に和志さんが暴走し始めたのが30分前。
 もぐもぐ教徒だったらしく、手当たり次第開発中の実験薬を食べ始め、すでに体内でどんな反応が出ているかわからない状況です。」
 akiharu国密林に生息するキノコは肉体増強作用や、感覚強化作用に富んでおり、医師たちの手により、ドラッカー用に戦闘薬として開発されている。
 ここで言う実験薬とはそのキノコから抽出された成分、あるいはキノコそのものだったりする事が多い。
 「新薬開発棟での投薬実験は見直すべきね...風紀委員会は?」
 「暴走から10分後、到着。竹刀やメスで応戦しましたが効果無し。現在周辺3ブロックを封鎖して爆発物を設置。焦土作戦に出ています」
 「そんな事したら修理費がかさんで学長から嫌味が飛んできそうだ...」
 げっそりとする天狐。頑張れ、中間管理職。
 「対処法は?」
 「体内に入った成分を分解する薬を投薬すれば、暴走が収まるはずです」
 「鎮静化が必要ね」
 「ようするに殴って気絶させるんでしょう」
 「他に考えがあるなら聞くわよ?」
 「ないです」
 阪たちが現場に着くと、そこにはすでに人ではない何かになってしまった化物がいた。
 「でかい……」
 天狐が思わず後ずさる。すらりと鞘から剣を抜く阪。慌てて天狐も剣を構える。
 「和志さん、恨みは無いけど覚悟して下さいね」
 阪が和志の右側に回る。
 「嘘だ、絶対小さいって言われてる普段の恨みを晴らそうとしてる!」
 サポートするように左側に回る天狐。
 「天狐さん、戦場で後ろに気をつけたいですか?」
 「天真爛漫な阪さんが恨みなんか持ってるわけ無いですよね、うおっ!」
 暢気に二人が話している間に、和志は天狐をひょいっと摘み上げる。
 「前にもこんな事があったような...」
 そのまま和志は天狐を口へと運んでいく。
 「いや、和志さん、落ち着いて!普段の俺を知ってるなら、食った瞬間死ぬってわかるでしょ?!」
 「そうよ、そんな物食べたら胃の中で水虫が繁殖するわよ!天狐さんをはなしなさい!」
 「阪さん、それはそれでひどい!だから食うなって!」
 必死に口を蹴る天狐。
 足元に回り腱に剣をつき立てようとする阪。が、乾いた音ともにはじき返される。それでも衝撃が伝わったか、後ろによろめく和志。阪の頭上に迫る巨大な足の影。
 「きゃあ!」
 「くっそ、阪さんまで潰された……綸子さん!」
 「はっ、はい?!」
 「爆発物の準備は出来てるな?この区画を爆破しろ!」
 「で、でも天狐さんは?」
 「大丈夫だ、ギャグキャラは死なない」
 「そんなっ」
 その時であった。
 「希望は今から生まれるのよ」
 微かな声と共にそれまで小さくなっていたかれんちゃんが顔を上げる。
 制止する綸子の手を振り払い、確かな足取りで一歩を踏み出す。
 「希望は今から生まれるのよ」
 凛とした瞳をたたえ異形となった者をじっと見つめる。
 和志は吸い込まれるかのようにかれんちゃんの瞳を見つめる。
 「今だわ!」
 綸子が巨大化した和志の首筋にむけ、注射器を一閃させる。
 ぶすりと言う音と共に薬品が和志の体内に入っていく。
 3……2……1……
 次の瞬間、どうっという大きな音と共に和志が倒れる。
 力の抜けた手から天狐が抜け出してくる。
 「た、助かった……」
 見る見るうちに和志の体が小さくなっていき、その近くから阪が起き上がってくる。
 「今度ばかりは危なかったわ……」
 無事だった二人の姿を確認し、気が抜けたのかその場にふらふらと倒れるかれんちゃん。
 あわてて、周りから人が駆け寄っていったのであった。

生徒会歌 作:田中申

 三千世界では
 今も昔も必ず誰かが
 靴下を狩る者たちを
 全力で倒している
 
 本気で貫け
 悲しみを生まないため
 ソックスハンターよりも
 ずっとずっと速い速度で
 
 どんなに強い敵でも
 絶対に倒してやる
 みなが喜ぶ世界を
 生み出すために立ち上がれ
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 どこかにいる普通の誰かが
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 幸せだったらそれが幸せ
 
 
 七つの世界では
 今日も明日も必ず誰かが
 美少年愛でる者を
 涙ながら倒している
 
 本気で説得
 悲しみを生まないため
 ハンターの妄想より
 ずっとずっと強い力で
 
 どれほど強い思いも
 完璧に正してやる
 みなが喜ぶ世界を
 維持するために立ち上がれ
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 がんばっている普通の誰かが
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 幸せだったらそれが幸せ
 
 
 食堂の外では
 右も左も後ろも真下も
 立ち食いしている者の
 もぐもぐをやめさせてる
 
 本気で教育
 苦しみを生まないため
 もぐもぐの神々より
 ずっとずっと清い礼儀で
 
 どんだけ強い空腹
 心から満たしてやる
 みなが喜ぶ世界は
 テーブルマナー共にあれ
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 食べ過ぎていた普通の誰かが
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 節度を守ればそれが幸せ
 
 
 暗闇の部屋では
 本やテレビやその他もろもろ
 長時間見ている
 行動をやめさせてる
 
 本気で術式
 悲しみを生まないため
 それまでの裸眼より
 ずっとずっと高い視力で
 
 どんなにヒドイ目玉も
 一瞬で治してやる
 みなが喜ぶメガネは
 希少だからこそ価値がある
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 メガネかけてる方の人数が
 
 (バックコーラス)秋春統校生徒会
 
 ほどほどだったらそれが幸せ

要点・周辺環境内訳

要点

南国人

医師

風紀委員会

生徒会役員

周辺環境

医師

風紀委員会

生徒会役員

能力評価

体格筋力耐久力外見敏捷器用感覚知識幸運
+3+7+7+2+3+2+0−1−1

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