操縦技術を磨くため、あるヒーローは鍋の国へと赴いた。
鍋の国は数多くの共和国共通機を輩出しているメカの里にして、
未だ共和国でも随一の操縦能力を誇る強い舞踏子が暮らす国である。
そして何より、akiharu国と鍋の国は眼鏡の魂で結ばれた友好国でもあった。
「強い舞踏子さん、操縦技術教えてくださいよー」
「いいですよー。じゃあ鍋食べにいきましょうか」
「おー!」
湯気の立つ鍋。伸びる箸。
「豆腐おいしいです」
「あ、お肉煮えましたよ」
「……いやー、食べた食べた。また今度よろしく遊びましょうねー」
「またよろしくー」
舞踏子さんと別れて宿に戻る。
鍋風呂に入って汗を流し、歯を磨いて温かい布団に入って一息。
ああ、今日もいい一日だった。
「……ってちがーーーーう!」
翌日。
気が付くともはや1日終了。身に付いたのは鍋を美味しく食べるコツであった。
これではいけない。いや、鍋が美味しいのは全く構わないが、
今は悪と闘うために操縦技術を学ぶべきときなのだ!
鍋の誘惑に負けてはいけない!
「強い舞踏子さん、今日こそ操縦技術教えてくださいよー」
「いいですよー。じゃあ鍋食べにいきましょうか」
「おー!」
無限ループ突入。
こうしてヒーローは鍋の暗黒面へと落ちた!
そして一月後。
「強い舞踏子さん、今日こそ操縦技術教えてくださいよー」
「いいですよー。じゃあ鍋食べにいきましょうか」
「おー! ……というとでも思ったかーーーーッ!」
「鍋の誘惑に耐えた!? ……鍋の暗黒面から這い上がってくるとは、
ヒーローさん、あなたを甘く見ていましたよ」
「ふっ、豆腐と鳥肉の前に、一度は屈しかけたが、
よく考えたら俺は白身魚の方が好きだったぜ!」
「じゃあ今日はふんぱつしてふぐ鍋で」
「わーい!」
そしてさらに一月の時が流れた!
「……ふっ、これで鍋ツアー・初級コース〜嵐の巻〜の鍋は食べつくしました。
あなたに鍋の国初級免許皆伝のスタンプを押してあげましょう」
「ううっ、二ヵ月もただ鍋を食っちゃ寝、食っちゃ寝……幸せだったけど、無駄な時間を過ごした……」
そこには、やり遂げた顔をした舞踏子と、地面に手をついてうなだれるヒーロー(額に鍋スタンプ付き)の姿があった。
「この世界に無駄な鍋なんかありません!
……そして、この二ヵ月が、ヒーローさんをパイロットとして鍛え上げるのに必要だったのです!」
「なんだって! ……うおおおおお、この力は!」
体の中から湧き出してくる力! これは一体!?
「パイロットに必要なのは、技術だけじゃありません! 土台となるのは健康な体。
この二ヵ月、おいしい鍋を食べることで、ヒーローさんの体は元気に強くなりました!」
ヒーローにとってもその考えは理解できる。
かつては自分も超薬戦獣として体を鍛え上げてきた。
「なるほど! 自分も超薬戦獣として、
体に負けない強い薬、薬に負けない強い体を心に頑張ってきましたが、それも無駄じゃなかったんですね!」
「それはさておき」
「さておかれた!?」
「さあ、次は技術指導に入りますよ!
I=DやRBがなんで人型をしているかわかりますか。それは鍋を作るためなんです」
「なるほど!」
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