akiharu国総合学園都市(仮称)(以下、学園都市)はakiharu国に存在する学術都市である。
その目的は、個々の藩国民がより良い方向へ発達し、社会を発展させることである。
学校要塞の基本精神、それは、世界に愛と夢を、である。
「勉強することで、文字や計算、社会の知識を得ることで、世界の大きさを知って、
自分も大きくなって、やりたいことやできることが増える!
つまり、世界に愛と夢を!」
前半と後半がつながっていないと評判になった藩王の言葉である。
だがそれがいい、とは生徒たちの声である。
学園都市は、下は保育所、幼稚園から、上は大学院まで、幅広く取り揃えている。
そのため、各人の趣味嗜好や能力に合わせ、好きなところに入園、入学できる。
初等教育は義務となっており、基本的に国民は小学校から中学まで入学しなければならないことになっている。
ここでいう国民とは人間やカマキリや猫など、akiharu国に住む知類である。
全国規模のベビーラッシュ機運に乗り、当初の計画より規模が拡大されたという背景を持つ。
ここでは、人生の基盤となる知識を身につけ、知恵を育てることを目的としている。
ただし、実際には義務教育の免除や飛び級、飛び入学は認められている。
これは寿命が短く、刷り込みで生まれたころから知識が十分にあるカマキリや、その他人間以外の種族を考慮したためである。
特定科目のみ優秀な場合、その教科だけ上の学年で受けるということもできる。
むろん、学力不十分な生徒が誤って免除や飛び級になることがないよう、注意を払っている。
なお、初等教育で最初に学ぶのは、文字や算数より先に、「相手を思いやること」である。
以下がその例である。
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学校では、生徒たちは始めに、
「相手のことを考えましょう」ということを学ぶ。
ヒーローショーで。
「ところで君は、ショートケーキのイチゴは先に食べる方かな、後の方かな?」
「好きなものは後に食べる方だから、後ー」
「じゃあそこで、『残しているからいらないと思って……』と他の人にイチゴを食べられたらどうかな?」
「嫌だよ! 泣くよ!」
「そう、つまり他人のことを勝手に決めつけたらいけないんだ! ヒーローとの約束だぞ!
……と、いうわけで、今日の給食のデザートはショートケーキです」
「わーい!」
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……とこんな具合である。
高等教育である高校以降の入学者は、希望者の中から面接や試験によって選ばれる。
このとき、どの学校も共通して重視されるのが人格と倫理観である。
それは身につけた知識の悪用を防ぐためである。
akiharu国は他国に比べて学校教育が充実しており、
また考古学など、他国では学べないような分野も盛んである。
しかし、高度な学問は大きな力に結びつきやすい。
そして、大きな力は振るわれる先を間違ったとき、取り返しのつかない事態を招くのだ。
そのため、高等教育の入学試験では、筆記試験よりも面接、特に人格と倫理面が重視される。
またそれに加えて、道徳面の教育に特に力を入れるよう心がけられている。
学園都市は高校や大学は複数あり、学生は自分に合ったところを自由に選択することができる。
また、申請をすれば他校の授業でも受けることができる制度も用意されている。
これは各校が互いに競い合うことで、よりよい教育環境へと発展することを期待しての制度である。
また、一度社会に出た生徒たちや、当時十分に学べなかった者たちが、
新たに学習するために入学することもある。
また、単位にはある程度互換性があり、他校への編入も認められている。
高校までの各学級は少人数制となっている。
あまり教室の生徒の数が多いと学級崩壊になる危険性があるからである。
そのため、教師が指導しやすいようクラスの生徒の数は制限されている。
また、なんらかの原因で教室が荒れた場合、そのクラスの教員の数を増やしたり、保護者に見学させるなどの方法で対処している。
少人数制を支えるには教師の数が重要だが、
akiharu国では昔から学校教育が盛んであり、
校舎を巣立った生徒たちが教師となって戻ってきてくれているのだ。
学園都市の開発計画は、必要以上に自然環境を壊すことなく配慮されており、
また、災害時に対応するべく、防災能力に配慮した設計を心がけられている。
学園都市は、鉄道やバスなどの公共交通が整備されている。
これは、樹木が生い茂るakiharu国において、カマキリやサイキッカーたち以外の空を飛べない者たちでも、
問題なく通学するためであり、
「空が飛べないくらいで学校にいけないなんておかしいじゃないか!」という精神が込められている。
身体障害者のため、駅や校舎はエレベーターが完備され、様々なバリアフリー化が試みられている。
たとえば、視覚障害者のために、ボタンに点字を添えることや、点字ブロックの配置などを行っている。
また、入り口を前後につけ、車いすの人でも方向転換せず乗り降りできるようにしている。
さらに、駅構内の自動販売機は利き腕や身長に関係なく、使いやすいようになっている。
同様にバスもノンステップバスとなっている。
おまけに悪の組織がよくやるバスジャックに備え、犯人に気づかれることなく、周囲に危険を知らせられる隠しボタンが装備されている。
電車は乗降扉の近くに、高齢者や障害者、妊婦などのための優先座席が用意されている。
また、利用者に応じて、冷房が効きすぎで寒いと感じる知類のための弱冷車なども用意されている。
なお、余談であるが、akiharu国はものを大切にする国民性があり、
電車や設備は大事に扱われている。
経済的理由で授業料が払えない学生のために奨学金が用意され、
格安の学生食堂や給食制も取り入れられている。
給食は味や栄養バランスはもちろん、アレルギーや食文化も考慮して調理されている。
なんらかの事情で通学や学習が困難な生徒のため、以下のような設備も用意されている。
・自宅との距離が長い生徒のための学生寮
・仕事の都合で就学困難な生徒のための夜間学校
・不登校や登校拒否、ひきこもりの学生を対象としたサポート校
・病気や障害を持つ学生のための特別支援学校
学園都市の運営は生徒会連合による自治権がある程度認められており、
そのため各校の周辺ではその特色が大きく出ていて、その差異も学生達には進学先選びのポイントとなっている。
この自治活動はやがて社会に出た後の訓練として大きな意味を持つと考えられており、
生徒会経験者の今後の活躍が期待されている。
ただし反政府運動などは風紀を乱すものとして、風紀委員会により取り締まられるため、
自治権を悪用し、学生運動を盾にしたテロリストの出現は抑えられている。
以上のように充実した設備と周囲の森林から、学園都市は学校要塞とも呼ばれている。
学園の復興。
そこには紆余曲折、様々な出来事があった。
それこそ語りつくせぬほどのエピソードがあるのが、今回はその中から一つを抜き出そう。
放課後、青空教室に生徒たちが集まっていた。
勉強はどこででもできる。
建前はそうだが、雨が降ると本が濡れるし、風邪もひく。
やはり校舎は必要だ。
生徒たちはそう考え、設備の再建に向け、話し合いをしていた。
「とりあえず昨日の晩、考えてみたんだ」
そう言って番長はノートを見せた。
そこには学校設備復活の計画が書かれていた。
「さすが生徒会!」
「よ! 風紀委員!」
カマキリやパイロットたちが口々にはやしたてる。
「ふん。
急いては事を仕損じるという言葉があるが、君の計画はまさにそれだな」
担任の鬼畜眼鏡は、ちらりと見てそう言った。
「眼鏡先生、どこがダメなんですか?」
「一つ一つ教えてやろう。
君の計画ではここに通学用の路線を走らせるようだが、考古学者チームの現地踏査では地盤が弱いことが分かっている。
ここはショートカットせず、以前と同じこちらに迂回させるほうがいいだろう。
だいたい君たちは土木建築についてどこまで理解している。
たとえば、鉄道盛土において交通荷重に耐えうる支持力が必要だが、充分な検討はしたか?
安全性や環境についてはどうだ?」
そうして、大小様々な問題点を指摘する。
生徒の期待を打ち砕くかのような辛辣な意見が続く。
だが、彼らは諦めなかった。
「メガセン! 助言、サンキューな!」
感謝を口にして生徒たちは走って行った。
「やれやれ、おめでたい頭だ。
鬼畜をするのも大変だな」
鬼畜眼鏡は笑ってそう言うと、携帯を取り出し、保険医に電話した。
「先生、うちの生徒が無理をするかもしれません。
なにかあったときは、よろしくお願いします」
結局のところ、鬼畜眼鏡も彼らのことが嫌いではないのだった。
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