akiharu国星見学部、それは世界についての知識を学ぶ、星見司を養成する学部である。
設立目的の一つとしては、考古学のさらなる発展のためである。
まず、akiharu国の考古学者たちは、古代の遺産としてのTLOに触れる機会があり、
星見司としての知識を持たないままでは、危険だからである。
これについての藩王の言葉がある。
「よその国では、遺跡は危険なものとして腫れ物扱いになっている。だけど、うちは遺跡の国だ。
地下を掘るなとは言わない。だけど、やりたいのなら、ちゃんと勉強して資格を取るんだ!」
「おー!」
「それに、制御も大事だけど、やっぱり前提となる知識がないと、昔の人の遺産もちゃんと読み解けないからね。
昔の人の残したものをちゃんと受け止めて、僕たちはその先に進まないと! いや、進むんだ!」
「よし、やってやるぜ!」
また、ニューワールドの技術は日々発達を続けており、TLOを生み出し始めている。
最先端の技術者には、十分な星見知識がなければ危険な時代が迫っているのだ。
akiharu国の場合、科学と魔法を組み合わせた、いや、あるいは科学の壁を突き抜けた、
TLOドラッグの開発すら考えられるのだ!
そして、さらなる理由として、カマキリたちには他世界移動者を認識する能力があるようであり、
ちゃんとした知識がないと、能力が感知したものを正確に理解できず、勘違いしてしまうのではないか、
というものがある。
「……いや、カマキリたち、僕らよりよっぽど星見知識があるような気が」
「はっは、なんのことやら」
そして、最も大きな理由は、世界を理解することで、
世界の更なる奥深さと面白さに触れ、新しい未来を目指すことである。
「行こう、俺たちの未来へ!」
星見学部の学生たちは、入学において知識ではなく、心構えを見る。
これについて、藩王はこう語っている。
「真理を知ろうとする者は、その対象に対して愛を持って挑まないといけない。
つまり、愛だよ愛」
また、現在、星見学部の入学資格があるのは、akiharu国の民のみとなっている。
これは、対外的には、実験的な学部であるためとしているが、
実際には、第七世界人問題など、他国の民が知ると、内乱の要因になりかねないためである。
世の中がみんなakiharu国なわけではないのだ。
このこともあり、本学部で得た知識の内、世界構造の根幹に関わる部分は、基本的に口外禁止となっている。
また、講師については現在、星見2級の涼原秋春藩王と、星見4級の444摂政の二人だけとなっている。
これは、新設の学問であり、講師の資格が少ないためである。
将来的には、本学部で学んだ生徒から講師が出てくることが期待されている。
星見学科のキャンパスは他の学科と離れた森の奥にある。
これは、星見として星を観測するにあたって、他学科や学生街の灯りが妨げとならないためである。
また、星見学科の授業内容について、秘密を守るためでもある。
学生たちは、ここで講師を相手にボケとツッコミを交えながら授業を受け、
世界についての心と知識を学ぶ。
心がなければ、知識はただの力となり、相手を真に理解することはできない。
星見の知識を得るのは、世界をさら深く愛するためであり、知識を弄ぶためではないのだ。
また、知識がなければ、よかれと思ってしたことで、逆に致命的な事態を引き起こしてしまう。
そして、ボケとツッコミがなければ授業は心に響かないのだ!
このことから、生徒たちははじめに三条の宣誓を行う。
・心に愛を。
・寝ない。なるべく
・ボケが足りないときは、自分からボケます。
……さて、実際の授業の内容を、一部抜粋してみよう。
世界について:
「世界っていうのは、実はこのニューワールドだけじゃなくていっぱいあるんだ。
サーラ先生や岩崎なんかも、他の世界から来てるんだ」
「へー」
「色んな世界があるんだけど、なんで世界がいっぱいあるか。
はい、そこの君! なんでだと思う!?」
「いっぱいあった方が面白いから!」
「惜しい! 正解は、いざってときに助け合うためでした。
でもウルトラ惜しいので、キャラメルをあげよう」
「わーい!」
いいなー、と他の学生が見つめる中、
涼原秋春藩王、改め、教官は、惜しいどころか真理じゃなかろうか、とは思ったが、
ややこしいので黙っていた。初心者に世界間の差異がどーたらと言っても始まらない。
「まあそれはともあれ、世界が滅びそうになったら、世界そのものが助けてくれることだってあるんだ。
夢の剣のときだって、
『お前、人口減りすぎててまずいだろ。うちの世界から生まれ変わる準備のできた魂持ってけよ』
とよその世界が助けてくれたりしたんだ。……そして現在のベビーラッシュに至るわけですよ!」
「なるほど!」
「世界と世界は、いいことも悪いこともつながりあって、バランスを取り合っているんだ。
……まあ、あんまり被害が大きすぎると、共倒れをさけるために切捨てられるけど」
「まあ、それはしょうがない……」
「世界にだって限界があるんだよ。切捨てたくって捨ててるわけじゃない。
……だから、世界に住む僕たち一人一人が、そんなことにならないように
頑張らないといけないんだ」
「おー!」
世界について2:
「異世界には色々ある。例えば、人間だけじゃなく、動物や植物や、ロボットやよくわからない生き物が、
みんなで手を取り合って生きてる世界なんてものもあるんだ」
「いってみたいなー」
「だけど、世界を移動することは気をつけなきゃいけない。いや、基本的にやっちゃいけないんだ」
「なんで?」
「まず、世界さんは、人口とかちゃんとカウントしてるんだよ。
じゃないと、管理できないしね」
「そりゃそうだよね」
「だけど、世界移動されると、
『あれ、いつのまにかいなくなってる人がいる。人口の帳尻が合わない……あれー?』
と、ぐるぐるし始めます!」
「吏族の人たちみたいだね!」
「それで世界さんは最終的には、「ならば最初からいなかったことにしてしまおう……」と、
世界移動した人がいなかったように、歴史を修正しはじめます」
「世界さん、落ち着いて!」
「世界さんだって大変なんだよ! あ、ちなみに、世界移動された側の世界も、
『人口がいきなり増えてる。なんで……?』とぐるぐるし始めます。
世界移動は、移動前と後の世界が、両方ともダメージ食らうってことだね」
「うわー」
「そして世界移動した人があんまり大規模に出ると、
世界さんは熱出して寝込んで、世界がぶっ壊れはじめます」
「世界さん頑張って!」
「せんせー、夢の剣のときは、大量に世界移動した人がいたみたいですけど、大丈夫だったんですか?」
「夢の剣のときは正直、人が死にすぎたことで世界さんがパニくってて、それどころじゃありませんでした。
危なかったね!」
「世界さん……」
「まあ世界さんは、僕たちが思ってるよりも、よわよわなので、気をつけてあげましょう」
「はーい」
まあ最近は、ニューワールドに世界移動しにくくなる機械で結界を張っているので、
そこまで心配しないでいいと、説明した。
「あとは、少しの間だったら問題なかったりします。
短期間なら世界さんがチェックしきれないわけだね!」
「世界さんの隙を見計らって忍び込むわけですね」
「それから、レムーリアからニューワールドに移民の人が来たりしているけれど、
これはニューワールドは色々とフリーダムな世界だから大丈夫な側面もあるわけだね。
他の世界で不用意に真似をすると、大変なことになるかも知れない」
「猫耳種族が普通じゃない世界に、猫妖精のみんなが行こうとすると、
向こうの世界さんに『猫耳はうちの子じゃありません!』とされて、即死することがあります。怖いですね」
「まあ、ニューワールドがフリーダムなのは、第七世界人とか……」
「はっはっは」
わかってるからそれ以上言わなくていいよ、という笑顔を見せる生徒たち。
ニューワールド随一のフリーダムっぷりである。
WTGについて:
「世界さんは、ワールドタイムゲートという、まあリンクゲートみたいなもので、
『おうお前、そっちの近況はどうよ』と、お互い連絡を取り合ってます」
「空を見て、『あれ、なんか星の配置がおかしくない?』と思ったら、
ゲートが空間を歪めているのかもしれません」
「あるいは僕たちが見た青春の日の白昼夢だったのかもしれません」
「落ち着け、4さん!」
「ギャグが、ギャグが足りない! やめろ、離せ! うわあああ!」
444は風紀委員会所属の生徒に連れて行かれました。
帰ってくるまで休憩になります。
/*/
休憩中
/*/
帰ってきました。
「やあみんな、心配をかけたね!」
「……まあそれはともかくとして。
世界さんは影響を受けやすい性格なので、ゲートを通して知った近況に染まっていきます。
『ニューワールドの東京だと、FEGってとこが高層ビル作ってるみたいだから、うちも作ろうぜ!』みたいに!」
「先生、じゃあうちに影響を受けたらカマキリがいっぱいの世界になるんですか?」
「世界さんも見て見ぬ振りをします」
「えー!」
「いや、世界さんもあまり様子が違うと『いや、急には無理』って言ってゲートを閉じちゃうんだ。残念だね」
「それに、世界さんは人間基準で考えるから、カマキリはあんまり関係ないんじゃないかなあ……」
「そんな、世界さんが、いや、世界が種族差別主義者だったなんて……僕たちの心を弄んでいたのか!」
「いや、巨大カマキリって、いる世界が少ないから、基準にできないんだよ。
人間は、わりとどの世界にもいるのが特長なんだ」
「それに、カマキリはいま確かにここにいる。
つまり、世界さんがカマキリを認めてるってことじゃないか!」
「そうか! ……すまなかった、世界さん!」
「まあ、世界が理不尽や窮屈に感じることもあるだろうけど、
世界さんだって生きているんだからしょうがない。
前も言ったけど、足りないところは僕たちが頑張るんだ」
「おー!」
TLOについて:
「TLOというのは、なんだかとっても凄い超パワーとその持ち主のことです。
うちの国だと、カマキリのみんなや士季号がそうです」
「世間ではTLOが危険だと言われていますが……というか、カマキリの君ら、自分でも危険だと思ってるだろ」
「まあな!」
「まあ、人間ほどじゃないですよ」
「はっは」
談笑しあう人間とカマキリたち。
カマキリは生きたTLOだが、人間だってもはやTLOを生み出せるのだ。
大切なのは、そんなことじゃない。
「……まあカマキリを考えるとよくわかると思いますが、TLOはその気になれば世界を滅ぼせる力を持っています」
「それに、TLOは暴走しやすい性質を持っています。
例えば、鍋の国では、治癒師の力を使いすぎた結果、死の砂が発生して、ひどいことになりました」
「だけど、TLOは、危険なだけではないことを、みんなはカマキリや士季号で知っていると思う」
「そうそう、士季号は近づくと時々、問答無用で、
『パワーアップできなきゃ死ぬ』的な試練を仕掛けてくるだけで、かっこいいよ?」
「危険じゃねえか! ……そう思ってたころもあったけど、そういう修行だと思えばなあ」
「うん。カマキリだって、喋ってるときに動かれると食べたくなるだろ。大事なのは付き合い方を知ることだよ。
カマキリはうちの国で仲良く暮らしているし、士季号も僕らの仲間です。要はその力の向かう先がどこかということなのです」
「まあ、話し合っても仲良くできないTLOもあるだろうけど、まず相手のことをわかろうとすることが大事なんだ。
それに、TLOじゃなくても危険なものはあるしね。
大事なのは、TLOというレッテルに囚われず本質を見ることなんだ」
「え、普通じゃね?」
「だよねー」
一斉に突っ込む生徒たち。そう、ここはakiharu国、akiharu国なのだ。
/*/
「次に、どんなものがTLOとなるか、ですが、まず有名なのが、科学と魔法を混ぜることです。
塩素系と酸性の洗剤を混ぜちゃいけないのと同じです!」
「科学と魔法に謝れ!」
「すまんかった! ……まあ、それはさておき。
他には、都合のいいことを無理やりしようとすると、よくTLOになります。
文字通り、どこかで無理してるわけですね」
「それから、TLOになるかの基準に、世界を滅ぼせるかどうかがあります」
「『これは世界を革命する力……!』 とか調子乗ってると、TLOになるんですね!」
「そう、そんなときは一歩立ち戻って、
『俺はこの力で何をしようと……どんな世界を作ろうというんだ……!』
と突っ込んでください」
/*/
「次は遺跡についてです。……遺跡は危険だと、あちこちで言われています。
南国人以外では共通認識と言ってもいいでしょう。
……ですが、僕たちは、真実は一つだけじゃないことを知っています!」
「と、いうと?」
「ある日河から、カマキリに対抗して超進化した巨大ワニが攻めてきました。
皆さんはどうしますか?」
「戦うー」「逃げるー」「仲間を呼ぶ」「とりあえず踊る」
口々に様々な答えが返ってくる。
「よし、どれもグッド。でも踊るって言った人は後で廊下に立ってなさい」
「ギャー、真実は一つだけじゃないのに!」
「真実だったらいいってもんじゃないよ! ……まあ、それはさておき。
遺跡が危険だとしても、立ち向かい方は、封印するだけじゃないと思います。
遺跡についてもっと知ることで、対処法だって見つかるかもしれない」
「ふむふむ」
「それに、遺跡というのは、昔の人たちの残した思い出です。
危険だからといって、昔をなかったことにして、忘れてしまうことは、僕はやりたくない!
今も未来も大事だけど、昔の人が頑張った結果、今の僕たちがいて、未来に引き継いでいくんだ!」
「おおー!」
「遺跡は危険かもしれない。でも危険じゃないかもしれない。
なら、まずは調べて、危険だったら封印するか、危なくない付き合い方をおぼえればいい。
僕たちがこうやって学ぶことが、過去と今と未来をつなぐ鍵になるんだ!」
拍手する生徒たち。
/*/
と、そんなこんなで授業を進めていった結果、
藩国の未来を担う星見司たちが育っていくのであった!
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