phase1 資金繰りで頭を下げよう

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「大統領、資源があるかどうか、やってみなきゃわかりませんよ!」
「やってみなきゃわからんで、予算出せるかーーーーー!」

大統領とakiharu国首脳部の会話

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「というわけで大統領、是非とも予算を」
「ええい、頭上げろ、野郎ども!」

冒頭の会話から続く。いや、微妙に続いてない気がするが、まあ続く。
翌日。涼原秋春と444は、大統領相手に、宇宙開発予算をねだって土下座していた。

「ったく……資源が欲しいのは俺も一緒だ。
 akiharu国に気前よく金だって出してやりたい。
 だがな、情と勢いだけで共和全土から集まった血税は出さんし、出せん。
 計画に金が欲しいんだったら、理論武装でまず俺を納得させろ!
 そしたら全責任を俺らで分け合って、一蓮托生にだってできるだろ」

すごくもっともである。

「えー、まず目的は3つあります。
 一つは、資源です。
 テラの共和国領域での資源は、最近鉱脈が見つかったナニワを除いて、頭打ちです。
 帝国のレムーリアのような、新しい開拓地を見つける必要があります」

「ですよねー」

頭を抱える大統領。タバコをふかす。

「それに、今はゴロネコ藩国さんや、オリオンアームからの援助である程度しのげてますけど、
 いつまでも頼るわけにはいきませんし。
 ……というか、もらったものには、それだけお返しがいりますし」

「ですよねー……」

机に突っ伏す大統領。すでに話を聞いてるのかもわからない。

「……えーと、次いいでしょうか」

「おう」

「じゃあ次。……資源だけじゃありません、今共和国は宇宙開発で帝國にはるかに遅れています。
 ……オリオンアーム戦も、ペルセウス救援も帝国に頼りきりでした。
 宇宙開発は一歩でも進めなきゃいけない

「ああ、それもわかってる。別に競ってたつもりもないが、確かに遅れている。
 宇宙開発は確かに大事だ。
 だが……本当に火星に資源が出るのか?」

「やってみなければ……じゃなくて、探査機を送って調査する予定です」

「仮に資源が出たとしてもだ、輸送・運搬の手間を考えると赤字にならんか?」

「うちのコールドオータムは燃費面じゃ優秀です。施設面での初期投資さえどうにかなれば、
 細々と利益は出るんじゃないかと」

「ふむ……DEX社とはまた違うプランか……おもしろそうだな」

考え込む大統領。

「もっと具体的な内容を聞かせてくれ。話はそっからだ」

「そうですね、まずは全体の概要ですが」

以下がマーズエクスプレス計画のプランである。

第一段階:火星への資源探査

第二段階:akiharu国宇宙ステーションAGEHAからコールドオータム発進。
     火星軌道上に第二宇宙ステーションAGEHA2号建設

第三段階:火星に採掘プラント・およびマスドライバーの建設

第四段階:マスドライバーで資源を火星から打ち上げ。AGEHA2号経由でテラへ。

「ん? テラに資源を下ろすのはどうやんの?」
「あ、それは無名騎士藩国さんから長距離移動システムの許可を取ってあります」

「第二宇宙ステーション自体のランニングコストは?」
「火星で産出される資源をある程度そちらに回します。動力は太陽光発電で。
 艦船整備能力をカットして航路もテラ領域のみとすれば、
 効率は悪いですが、なんとかプラスになるのではないかと」

「ふむふむ……で、akiharu国自体はこの計画をどう運用するんだ?」
「akiharu国には、宇宙ステーションAGEHAと、物資運搬用低燃費宇宙船コールドオータム、
 そして、宇宙ステーションで使われたマスドライバーの技術があります」
「なるほどね。これらは問題なし……と」

「問題になるのは、第二AGEHAや採掘プラント、マスドライバーの建設費です」
「ま。結局は金だわな……」
「うちからもターキッシュバン2採用費で、ある程度は出せますが、金銭面で隙を作ると、セプテントリオンが介入してきますし……」
「ああ。セプの介入だけは最低限防ぎたい……」

思案顔の大統領。

「大統領、資源問題を改善し、共和国の宇宙力を強化する、共和国全体に益のある計画です。
 なにとぞ……」

「だーかーらー、土下座で情勢動かんのはVS皇帝で俺も学習済みだ、頭あげろ!
 計画は理解した、すべて必要なことばかりだ。
 でもな、採算が取れるかどうかわからない、不確かなことに大統領府からは金は出せん」

「大統領!」

「……でだ。大統領としての建前はココまでだ。
 俺はFEGの藩王でもある。そこを利用しよう。
 ウチの国のセプに喰われてない企業や投資家に宇宙投資を打診する。
 FEGなら大統領府とは違った動きができるから、そっから金を捻出する!」

「わー、是空さんばんざーい!」

「喜ぶのは早いぞ。FEGの金使う以上、ちゃんと成果出せよ!
 って……なんだその顔……まだ他にもあんのか?」

「はい、うちでは今、人口減少と経済崩壊で、技術者がいなくなっています。
 政府からの食料配布で、なんとか人は集めるつもりですが、FEGさんから技術者をお呼びしたく……」

「高層建築や巨大建造物ノウハウの応用か……手配してみんとわからんが、まぁFEGなら出来なくはないわな」

「それから、宇宙での作業要員。うちでもやってやれないことはないですが、
 テラから離れて、作業難易度がさらに上がる火星宙域では、サイボーグがやっぱり欲しいです」
「わかった。わかった。それもFEGでまるっと手配する」

大統領の返事にほっと胸をなで下ろす二人。しかし。

「……で、お前さんたちは何すんだ?」

「「ハッ……ばれた?!」」
「ばれた?! じゃねー!」

大統領のツッコミが炸裂した。

「いやまあ、冗談はさておき、
 設計と、打ち上げる前にユニット部品を地球上で組み立てるのがうちの担当です。
 図面は数ターン前のを引っ張り出してきたものなんで、むしろ今より信頼性高いです」

「ならOKだ。担当決まってるなら各国に打診して協力あおげ、慎重に、かつ速攻で対処しろよ?」

ジト目で睨む大統領に多少あせったか、引きつった笑顔を浮かべて二人は図面を広げだしたのだった。

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追記。

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涼原秋春と444との会談を終えた夜、是空とおるは火星を見あげていた。
立場上、いろいろゴネタ是空ではあったが、二人の努力や思いは十分に理解しているつもりだった。

「ちゃんと出来っかわかりませんけど、俺は俺の支援をします。命も、思いも、ちゃんと受け継がれてますよ……。
 共に和して自由の旗に栄光を……レディ」

現在のakiharu国を包み込むのは、共和国の宇宙への期待と、大きな母の愛である。

大統領は後世に残す日記の中に、そう綴った。