phase5 資源、地球へ!

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「やっと、第一歩ですね」
宇宙服を着込んだ青年は空を見上げて言った。
薄い大気もお構いなしに伝わってきた轟音も、今では嘘のように静かで。
そこが地球への出発点だったとは、もう過ぎた夢のようであった。
「馬鹿、こんな若くから呆けるなよ」
大男が呆然と立ち尽くしてる青年の頭を思い切り小突いた。年恰好からして青年の上司だろう。
「これから何百何千回も飛ばすんだ、いちいち感傷に浸ってる暇なんてねぇぞ」
この大男、こんなことを言っているが、仕事をほっぽり出してこの特等席に見学に来ているので同罪である。
「最初の一回ぐらい、いいじゃないですが、見入ってても。それに、」
青年は小突かれた反動で逃げるように地面を蹴った。単純に重力が地球の3分の1、高い。
「僕は何千回も見る前に、絶対国へ帰るんですからね」
「馬鹿、俺の任期が切れるまでにがさねーよ!」
するりと伸びる腕。ぐえ、首、入ってる、首。

その頃火星では。全く関係ない会話  21209002

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 その日は、akiharu国中がそわそわしていた。
祭が始まる前の、心が逸るような気持ち。そんな空気が国民から同調して伝わってくるようだった。

火星軌道上の第二宇宙ステーションAGEHA2号、FEGのサイボーグたちによって建造完了。
整備能力や航路数増加能力などはAGEHA(1号)と比較して大きく機能低下していたが、
放射線の強い火星軌道のために、乗員とシステムを守るための耐放射線機能のみは強化されていた。

火星前線基地完成。
最初はコンテナを組み合わせたような機能第一の基地であるが、
知類が火星に築いた偉大な第一歩である。

火星に採掘プラント完成。
宇宙の壁は未だ厚く、人員を大量に送り込めないためと、
人力での火星での採掘は、あまりに過酷すぎるという人道上の事情から、、
機械を用いた自動的な採掘基地となった。

マリネリス峡谷にマスドライバー完成。
火星の空を切り裂いて、宇宙に、そしてテラに向かって待ち望まれた資源が打ち上げられた。

 火星のマスドライバー。火星周回軌道上のAGEHA2。そしてtera周回軌道上のAGEHA。最後に無名騎士藩国の長距離輸送システム。
長い長い工程。だが我々は技術の粋を集め、遥か火星からこのテラまで資源のリレーに成功したのである。
そして、今日。その資源を乗せたコールドオータム第一号が無事AGEHAに到着。緊急でakiharu国へ輸送されてきているのだった。

 akiharu国政庁も国民同様そわそわしていた。ただしこちらは別の意味である。
資源第一号の到着をもって、記念式典が行なわれる予定であった。少なくない報道陣も来る予定である。
藩王と摂政は逐一状況の報告を受けながらも、あーでもない、こーでもないとスピーチの推敲を繰り返していた。

「こんな感じでどう?」
「いや、これは流石にフランクすぎるだろ」
一応国外に流れるのである。それなりの体裁はとっておきたい。
そこへ岩崎が報告しにやってきた。
「どうやら到着したようだよ」
手元の原稿を見る2人。
「あー、間に合わない!よし、直す前の原稿でいく!」

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 スピーチは、いつもの場所で。
「皆さん、この記念すべき日に、よくお集まりいただきました」
だがいつもよりなんとも堅苦しく始まった。

開始5分経過。
届けられたコールドオータムに皆の視線が集まる!

開始10分経過
みんなの目が泳ぎはじめる。

開始15分経過。
うずうず。ああ、国民は皆もう話聞いてないよ。

期待の眼差しが藩王に集まる。
ふぅ、と一呼吸。ああ、そうだったそうだった、うちの国はこうだったな。
もう一度大きく息を吸い込むと、スピーチ原稿を思い切り放り投げ、あらん限りの声で叫んだ。

「祭だーーー!!存分に騒げ!!」

白い紙片が舞い散る中、巻き起こる国民の歓声の渦におされ、壇上を降りた。
結局いつもどおりである。
実は初火星到達のときもAGEHA2完成のときもこれをやっているので毎度毎度のことである。
流石に今回は他国報道陣もいるので真面目にやりたかったが…まぁ、しょうがない。
「はぁ、式典こんな適当で、なんて書かれるかなぁ」
「それ以前に、いつも政策でヒーローショーしてるじゃない」
「それもそうか」
岩崎につっこまれうな垂れる。

半分諦めの境地である。そして泣き言を言ってる暇もないのだった。
採算を取るための更なる効率化、そして次なる火星開発、宇宙事業。
共和国の宇宙軍強化も各国連携して進めねばならない。
問題山積み、体が二つ欲しいくらい…いや、この場合は、PLACEだ!
「頼んだ、岩崎!」
がしっと、肩を掴む。
「? なにをだい?」
「いや、別に何をしてほしいわけじゃなくてね、むしろ休んで欲しいくらいなんだけどさ!」

岩崎に不思議な顔をされつつも、実際切実な問題なんだぜ!と心の中で泣く藩王であった。