phase2 火星へ、その大いなる一歩

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火星に眠るという莫大な資源という名の宝。
だがしかし。NWにおいて未だかつて火星の本格的な探索は行なわれたことはなく、
マーズエクスプレス建造計画は、その宝の地図に暗雲が立ち込めたままの出発となった。

「なに、火星? 発掘しがいがありそうだな!」
ニッと不敵な笑みを浮かべ、黙々と作業を進めるのは略奪系考古学者たちだった。
計画の第一段階として、兎にも角にも火星の資源の在り処を突き止めないといけない。
そんな折に注目されたのはakiharu国考古学である。
発掘の一環で行なわれる地質調査を元に、
無人火星探査機に搭載する自動資源探索装置の開発が進められていた。
その目的は2つ。資源確保の最有力点を見つけること、マスドライバー設置地点の地形調査である。
この探索にはそれなりの時間を要するため、地上のマスドライバー試作機建造と同時並行で行なわれる。

事前プランでは、マスドライバーの設置箇所は赤道付近のマリネリス峡谷が有望と見られている。
理由としては、
・深さ最大7km、平均6kmと高さを十分に取れる。
・幅は最大200kmと十分な広さ。
・峡谷といっても一つではなく集合体なので、丁度いい谷を選べそう。
・東西方向に伸びているので、自転を利用した射出が可能だと思われる。
という利点が挙げられていた。

略奪系考古学者たちは自動化面に苦難しながらも、
他国の技術者の協力を得てこの計画の要を作り上げていった。
ついでに完全に趣味で資源発掘?機の設計も進めながら。

メインとなる無人火星探査機のベースは、もちろん目下開発中の宇宙用ターキッシュバン2試作機である。
試作型と言えば宇宙ステーション「AGEHA」に対デブリ用砲台として運用されているのが記憶に新しいが、
この火星探索機は砲台改修機とは逆に、動力部分を残し、武装は全て調査用アームや分析機材に改修されている。加えてセンサー機器や通信機器も大幅強化し、遠くテラへの通信を万全のものとした。
フレーム部分は同等の耐圧、耐熱、耐宇宙線、及び気密処理を行ったものを使用しているが、
打ち上げコスト削減のため、より軽量加工の施された素材にマイナーチェンジされた。

そして若干この探査機を不恰好にしているのが外付けの燃料タンクだった。
長時間稼動を実現するために大量に予備燃料が必要だったのである。
しかしそれではどうにもコストパフォーマンスが悪い。
そこでなんとこのI=Dには試験的にソーラーパネルが搭載された。
普段は効率よく小さく折りたたまれたそれは、広げるとまるで翼のようにみえる。
材質的にはAGEHAで使用されたものであり、得られた電気は動力補助と分析機器用電源として使用された。

このようにターキッシュバンを応用する手法はakiharu国でよく見掛けられる。
その主な目的はコストダウンであるが、実はもう一つ秘密がある。
akiharu国のかわいい自慢の中のひとつであるこの青いI=D。
国民は皆、この機体を見ると笑顔になり、応援したくなるのだった。
そして意味もなくこう思う。「こいつなら大丈夫だ!」と。
一見何の根拠もない自信だが、この抜群の信頼が自然と技術者たちへ安堵感をもたらし、
データの面でも安定した数値を叩き出すのだ。

今、宇宙蝶の一旦から宇宙ターキッシュバン探査型と予備燃料をつめた
大気圏突入型コールドオータムが射出された。
火星に着き次第、数機のターキッシュバンが展開され、資源採掘の推定有力ポイントへ向かうだろう。
ただしその姿を我々は知りえることはできない。最小限、地形データのみの通信しか設定していないためだ。
だが、我々はありありと想像できた。赤い大地に降り立った青い猫が、その煌く翼を広げる姿を。

これがakiharu国、火星への第一歩である。