プロローグ マーズエクスプレス計画発動 |
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prologue02 |
藩王涼原秋春は演説していた。 「共和国は今、深刻な資源難にある」 黒曜子大量生産による資源難はなんとかしのいだものの、国内にこれといった資源獲得場所を持たず、 「……だからこそ、新天地を開拓する必要がある。 「藩王様、難しい話だとみんな寝ちゃうんで、もっとヒーローっぽく!」 「くそっ、みんな静かだと思ったぜ! よーし、ヒーロー変身! みんな、この模型を見てくれ。これが火星だよー」 わー、と一斉に起き出す国民たち。 「……と、いうわけで、ここに火星があって、ここから鉄とかを掘ってくるんだ。 模型の火星とテラとの間で、コンテナ型模型を動かす藩王。 「その鉄とかを、他の国に売って、かわりにみんなのご飯を買ってくるんだ。わかったかな!」 手を上げる国民たち。 「はーい、藩王様」 ある子供の質問だった。 「ぼくたちみんなで火星に移り住むんですか?」 どうでもいいが、ここでの人は、人や猫、カマキリといった国民たちを合わせた言葉である。 「……でも、テラは、戦いばっかりで怖いよ。火星なら、もう争いなんてないんでしょ?」 静まり返る場内。 「……僕たちは、共和国の一員だ。 藩王が拳を突き上げると、国民たちの歓声と拍手が響き渡った。 /*/ 演説から涼原秋春が執務室に戻ると、そこには444と岩崎が待っていた。 「お疲れ」 岩崎の言葉に答えず、椅子に座ると、手のひらに顔を埋めて、絞り出すように言った。 「……僕は、きれいごとで、国民を苦しめる道を進ませようとしているのかもしれない」 静まり返る執務室。 「それで、これからはどうするんだい。火星開発となると、色々準備するものがあるだろうけど」 重くなった空気を切り替えるように岩崎が言うと、444と涼原秋春は顔を合わせて答えた。 「ああ、うん、それなら」 |