プロローグ マーズエクスプレス計画発動

 about

 prologue01

 prologue02

 phase01

 phase02

 phase03

 phase04

 phase05

 epilogue

 phase06

 stafflist

藩王涼原秋春は演説していた。

「共和国は今、深刻な資源難にある」

黒曜子大量生産による資源難はなんとかしのいだものの、国内にこれといった資源獲得場所を持たず、
レムーリアに拠点を持たない共和国の資源危機は深刻さを増すばかりであった。

「……だからこそ、新天地を開拓する必要がある。
 それがあの赤い星、火星!
 今こそ、共和国の三大宇宙開発国の一つであるakiharu国が、火星からの資源獲得に乗り出すのだ!」

「藩王様、難しい話だとみんな寝ちゃうんで、もっとヒーローっぽく!」

一人の国民の突っ込みに、聴衆たちを注視すると、演説に集まった国民たちは、すでにぐーぐーと立ったまま寝ていた。

「くそっ、みんな静かだと思ったぜ! よーし、ヒーロー変身! みんな、この模型を見てくれ。これが火星だよー」

わー、と一斉に起き出す国民たち。
昔はただかっこいいこと言ってるだけで喜んでくれたのに、と心の中で涙を流す藩王であった。

「……と、いうわけで、ここに火星があって、ここから鉄とかを掘ってくるんだ。
 その鉄を掘って、このマスドライバーで地球まで打ちだす!」

模型の火星とテラとの間で、コンテナ型模型を動かす藩王。
ひゅーんと言う擬音つきだ。

「その鉄とかを、他の国に売って、かわりにみんなのご飯を買ってくるんだ。わかったかな!」
「おー!」

手を上げる国民たち。
実際には鉄じゃなくてもっと違う金属かもしれないが、まあそんなのはささいなことだ、きっと。

「はーい、藩王様」
「はい、そこの君、質問どうぞ」

ある子供の質問だった。

「ぼくたちみんなで火星に移り住むんですか?」
「うーん、いい質問だね。でも今この国には人が少ない。
 火星にまで住んでる余裕がないんだ。
 資源を掘る基地を作って、資源を掘ってくる少数の人たちだけが、いくことになると思うよ
 それに、宇宙施設だから、うちの国でのカマキリのみんなの暮らしもそのまんまだ」

どうでもいいが、ここでの人は、人や猫、カマキリといった国民たちを合わせた言葉である。
いや、ほら、知類とかいいかえるのめんどくさいので、細かいことを気にしない藩王たちはそう言っていた。

「……でも、テラは、戦いばっかりで怖いよ。火星なら、もう争いなんてないんでしょ?」

静まり返る場内。
藩王は、見えないように強く拳を握り締めると、一呼吸置いて言った。

「……僕たちは、共和国の一員だ。
 一つの体を二つに割いても生きていけないだろ?
 共に和す心っていうのは、苦しいことはみんなで乗り越えて、
 楽しいことはみんなでお祭りするってことなんだ。
 ……大丈夫、僕たちは一人じゃない、みんなと一緒だ!
そしてみんなも僕たちと一緒だ。この共和国を、みんなで守っていこうじゃないか!」

藩王が拳を突き上げると、国民たちの歓声と拍手が響き渡った。

/*/

演説から涼原秋春が執務室に戻ると、そこには444と岩崎が待っていた。

「お疲れ」

岩崎の言葉に答えず、椅子に座ると、手のひらに顔を埋めて、絞り出すように言った。

「……僕は、きれいごとで、国民を苦しめる道を進ませようとしているのかもしれない」
「みんなで共に和す。君が言ったことだ。彼女の遺言でもある……その言葉は嘘なんかじゃない」
「ああ……まだまだ、これからだ」

静まり返る執務室。

「それで、これからはどうするんだい。火星開発となると、色々準備するものがあるだろうけど」

重くなった空気を切り替えるように岩崎が言うと、444と涼原秋春は顔を合わせて答えた。

「ああ、うん、それなら」
「大統領に……」
「土下座?」