phase3 甦る技術力

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「「よーしみんな、仕事をしてご飯食べるぞーーー!」

「おーーーーーー! ……うう、この日が来るのをずっと待っていたよう」

藩王からの、給料を食料として供給する形でのI=D工場および宇宙ステーション再起動を受けての、
技術者たちの声。

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「すまぬ……すまぬ……」

技術者たちの声を聞いての、藩王と摂政の声

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「それじゃいきますよ。3,2,1……発射!」

轟音を立てて試験用コンテナがレールから打ち出され、しばらく滞空した後で、
パラシュートを広げて海面に着水した。

akiharu国の外れ。
ここではマーズエクスプレス計画において、
火星からの資源打ち上げを行うマスドライバーの動作試験が行われていた。

テラの環境は火星とは違い、重力や大気組成など様々な面で異なっていたが、
無重力での宇宙ステーションの一部としてのマスドライバーの運用データだけではなく、
重力下での打ち上げデータを取得するべく、akiahruとFEGの技術者たちは試験を繰り返していた。

だが……

「いかんなー、どうも試験用コンテナが安定しない。軌道がぶれる」

「シミュレーション上じゃ問題はなかったんだが……」

「実際に動かしてみないでわかるかよ」

「……しょうがない、マスドライバーをばらして検証してみよう。カマキリさんたち、よろしく」

はーい、と元気な声がひびくと、作業の手伝いをしている巨大カマキリたちが、マスドライバーを解体しはじめた

ちなみに、海面に着水したコンテナを回収するのも彼らの仕事である。

カマキリは、空飛べるあたりは、うちのサイボーグより便利だなー、器用さではサイボーグの方が上だけど。
……まあ、助け合えば問題ないか。
カマキリが大きな部品を軽々と運び、カマではできない細かい部品の解体を人間や猫たちが行うのを見て、
FEGからの派遣技術者は思った。

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解体してマスドライバーの細かいパーツごとに解析を行った結果、
試験用コンテナが安定しない理由が判明した。

「……部品の精度不足か」

「共和国の技術力低下がここで出るとはな……」

人間の目には見えず、機械でもほとんど判別できない、非常に小さな、しかし確実な、
部品の設計図からのずれが、マスドライバーの不安定さの原因になっていた。

「昔の工作機械の性能だったら問題なかったんだけどな……」

「しかしこれ、AGEHA2号のマスドライバーにも影響でないか? まあ、今問題が見つかってよかった」

「……いや、しかし、どうするよ、これ」

顔を見合わせる技術者たち。
無理もない、技術力の低下による部品の工作精度という、どうしようもない問題が立ちはだかったのだ。
そのときだった。

「話は聞かせてもらった!」

「は、藩王様!」

「こういったときのために手は打っておいた。いくんだ……鍋の国へ!」

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ここは鍋の国。

かつて、優れた職人たちを持ち高い技術力を誇りながらも、いつしか衰退し密林に沈もうとしていたが、
各国からの技術援助を受けて、不死鳥のように蘇った、にゃんにゃん共和国の重鎮である。
そして眼鏡を共に愛するakiharu国の友好国である。

「各国からの技術援助を受けてさらなる高い技術を……つまり、寄せ鍋はうまい?」

「なるほど!」

「いや、違うだろ、それ!」

技術者たちが漫才をしながらたどり着いた先、そこは鍋の国の工場であった。

「すいませーん、誰かいませんかー?」

そのとき、工場の奥で動く影が!

「待っていたよ!」

「だ、誰だ……!」

「いや、あなたは……!」

そう、そこにいたのは……!

「おばちゃん!」

おばちゃんだった。

「いや、誰だーーーーーー!」

ツッコミを入れるFEGからの技術者たち。

「あ、FEGの人たちは知らない? 鍋の国でI=D工場とかやってるパートのおばちゃんたち」

「どうも、鍋の国へようこそー」

説明しよう。
鍋の国のおばちゃんとは、I=D工場などでパートで働いているおばちゃんである。
その職人技は、日本の町工場の職人たちに匹敵する!
鍋の国の技術は、パートのおばちゃんたちによって支えられているのだ!
いや、頑張ってるのはおばちゃんたちだけじゃないけど!

「akiharu国の人から事情は聞いたよ、若い子たちが情けない。
 ……精度の悪い部品全部持ってきな! 私たちが全部再調整してあげるよ!」

「わー、やったー」

こうして工作精度の問題は解決された。
機械が駄目なら、人の手でやればいいのだ!

ありがとう、おばちゃん!
ありがとう、鍋の国!

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余談1:

ある日のおばちゃんへの質問。

「おばちゃん、どうやったらそんなにきっちりぴったり製品を仕上げられるんですか?」
「鍋を食べるんだよ。春雨を何本箸で持ったかわかるようになれば、そのくらい簡単だよ」
「またそのネタかよ! でも鍋すげーー!」

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余談2:

akiharu、FEG、鍋の首脳部会議。

「すいません、ご協力をお願いして何ですが、うちの国からの
 技術の流出については、ご注意お願いします」

「いや、当然だろ。うちの国のやつらには言っておく」

「末端では結構ゆるゆるになりますしね。うちも言っておきますよ」

「お願いします。うちも、情報流出はいけないことだって教えるヒーローショーやりましたんで」

「「あー……」」